2006 Fiscal Year Annual Research Report
「不登校」における「医療化」の多義性とポスト「医療化」論の構想
Project/Area Number |
18730330
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
工藤 宏司 大阪府立大学, 人間社会学部, 講師 (20295736)
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Keywords | 不登校 / 医療化 |
Research Abstract |
2006年度については、研究の初年度ということもあり、主に文献整理とデータの収集を行った。まず、医療化論の基礎文献を収集し、逸脱の医療化論の基礎文献であるP.ConradとJ.Schneiderの『逸脱の医療化』を中心に、その後の医療化論の議論を概観した。その後、その成果を、これまで申請者がフィールドにしてきた「不登校」の世界における現状と対話を試み、それについては書籍に掲載する論文の形で公表することができた。次に、「不登校」の親の会やフリースクールに関わりのある人々が中心となって編集し、当事者に多くの読者をもつ『不登校新聞』について、これまで出版されているものを複写入手し、データ整理を試みた。彼らの多くは「医療」との付き合いを模索しており、今後内容を精査・分析することで、知見に加えることを考えている。最後に、特に1990年代初頭から静かに注目を集め始め、2000年以降にわかに大きな社会問題となった「ひきこもり」について、その言説史をまとめる作業に着手した。「ひきこもり」は、歴史的には「不登校その後」として着目され始めたが、とりわけ犯罪との関連で着目された2000年以降、「不登校」の中でもとりわけ医学的な介入の対象となるか否かが、専門家の間でも議論となった。実はその議論には、「不登校」に関する同種の議論が大きく影響しており、これをまとめていくことは、「不登校の医療化論」を考えていく上で、有用な知見をもたらすことと思われる。次年度以降の課題として継続していきたい。
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