2006 Fiscal Year Annual Research Report
不法をめぐる正統性と公共性-不法占拠地域におけるマイノリティ権利の制度化
Project/Area Number |
18730332
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
金菱 清 東北学院大学, 教養学部, 講師 (90405895)
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Keywords | 正統性 / 正義 / 公共性 / マイノリティ / 法 / 権利 / 不法 / 在日 |
Research Abstract |
本研究は、これまで私的なものとして捉えられていたことを公共的なものとして当事者たちが組み替えていく過程を社会学の視角から解き明かした。具体的には、日本最大といわれる「不法占拠」地区である中村地区(大阪国際空港の国有地にある地区)を事例として、「不法占拠」という住民の不法な私的行為が、当の地区住民によっても、合法/不法の基準で行動する行政によっても、現場レベルではその正当性が認められているがゆえに、不法占拠住民への移転補償が合法的になされるという社会的仕組みを社会学的に分析した。この分析によって、法とは異なる形で土地に関わることで獲得してきた生活環境の権利の発生メカニズムと通例私的な生活に関わる権利を排除してきた公共性との結びつき(ミッシング・リンク)を明らかにした。 土地に関する所有の観念を手がかりに考えた場合、中村地区の不法占拠には、登記簿上という法的事実とは異なる原理が見いだされる。一例をあげよう。度重なる中村地区の火災で家屋が燃えた後に国は杭や有刺鉄線をたて、再建築を禁止する内容証明等を被災住民に通達する。これに対し、住民は、有刺鉄線や杭を自ら取り除き、集めた建築資材で深夜に家屋を再建し、再度生活を始める。いったん排除され、国が「管理」した更地に、住民は生活基盤を築き、まるで領土のように地域空間を支配する。むろん中村地区住民は、こうした行動の正当性を登記簿や地籍という法的制度の次元に求めていない。自らが土地に働き続けてきたがゆえに土地にかかわる自身の権利が承認されるという"根源的"な次元において、それを見いだしているのである。
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Research Products
(1 results)