2008 Fiscal Year Annual Research Report
不法をめぐる正統性と公共性-不法占拠地域におけるマイノリティ権利の制度化
Project/Area Number |
18730332
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
金菱 清 Tohoku Gakuin University, 教養学部, 准教授 (90405895)
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Keywords | レジティマシー / 正義 / 公共性 / マイノリティ / 法 / 権利 / 不法 / 在日 |
Research Abstract |
本研究は、「不法占拠」地域の人々により、私的な行為が「公共的」なものとして組み替えられるプロセスを追った。具体的には、日本最大といわれる「不法占拠」地域である中村地区(伊丹空港の国有地にある地区)において、「不法占拠」という不法な私的行為が、合法/不法の基準で判断する行政からも「正当性」が認められ、「不法占拠」地域の移転補償がなされるしくみを明らかにした。 最終的には「生きられた法」としてまとめた。生きられた法とは、国家の法による一元的な支配とは異なり、「国民国家」「民族」「土地」「生活環境」から何重にも締め出されながら、入びとが自らの規範に従って実践して生成されていく、相対的に自律した独自の社会的制度体(秩序)である。実践的なコミュニティにおいて獲得された知識に準拠し、「生きられた法」は生成される。法外に締め出されながらも周縁に位置取ることで外部へ向かって開かれ、グローバルな資本主義世界を自分たちのもとに招き入れ、無から財を築いていく。 マジョリティから排除され、法の例外状態に放り出されて「剥き出しの生」を背負わざるをえなかった人びとの「生きられた法」を通じて、「国民国家」をめぐってこれまで語られることもなかった生活実践、生活環境、コミュニティを、国民国家における法制度に結びつけるつながり(ミッシング・リンク)が浮かび上がる。この結びつきが、中村地区をとりまく社会的事実を支え、「不法占拠」を正当化する際の正義の母胎となっていく。こうした見方を「法外生成論」と呼び、他者を徹底して排除する20世紀以来の正義に代わって、社会的弱者の存在を肯定し容認する「寛容な正義」と「人類の幸福に資する」社会学的根拠を追求するうえでの鍵と位置づけた。
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