2007 Fiscal Year Annual Research Report
フィリピン、マニラ首都圏の公共集合住宅における地域社会の構築の研究
Project/Area Number |
18730341
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Research Institution | Niigata University of International and Information Studies |
Principal Investigator |
長坂 格 Niigata University of International and Information Studies, 情報文化学部, 准教授 (60314449)
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Keywords | 都市 / 家族・親族 / フィリピン / 地域社会 / 公共集合住宅 / 住宅政策 |
Research Abstract |
本研究の目的は、フィリピン、マニラ首都圏における公共集合住宅を調査対象として、都市を取り巻く諸変容の中で、住民がいかに家族・親族関係及び地域社会を再構築してきたかという点を明らかにすることである。3年計画の2年目に当たる平成19年度は、8月に約3週間、フィリピンに滞在し、マニラ市に1960年代に建設された低所得者向けの公共集合住宅にて質問紙調査及びインタビュー調査を実施した。 質問紙調査は、46世帯を対象として実施され、主な質問項目は、世帯構成及び世帯員の諸属性、世帯主夫婦の出身地と移住歴、非同居親族との接触、家事・育児の担い手、近隣世帯とのつきあいであった。また世帯への質問紙調査と並行して、初期移住者に対する公共集合住宅の歴史、コミュニティのリーダーに対する地域社会の組織に関するインタビューを実施した。帰国後は、引き続き文献資料の収集と検討をおこなうとともに、調査資料の整理をおこなった。現時点での調査から得られた主な知見としては、約40年前の建設当初は、収入制限や入居資格として家族構成などが挙げられていたため、同一地域出身者が団地内に集中することは、連鎖移住によって形成されるスラム地区などと比較すれば少なかったこと、しかし現在では公共集合住宅内部での婚姻件数が増加したうえに、退去者のユニットを居住者の子供が購入、賃貸する例が多数あったため、集合住宅内部で親族ネットワークが張り巡らされていることが少なくないこと、その結果、育児のあり方も、個々の世帯の状況に応じて親族ネットワークの中に育児負担を分散させるという、農村社会で見られるような形態も珍しくなくなっていること、ユニットが狭く、フィリピンの大衆社会の中で一般的な共食を催すためのスペースをとりにくいことから、特別な機会の料理の「おすそわけ」が盛んにおこなわれることで近隣関係の組織化、再組織化がなされていることなどが挙げられる。
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