2007 Fiscal Year Annual Research Report
心理主義化の社会学的研究:感情知による社会統制の把握に向けて
Project/Area Number |
18730344
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
崎山 治男 Ritsumeikan University, 産業社会学部, 准教授 (20361553)
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Keywords | 心理主義化 / 感情労働 / 「人間力」 / 対人関係のスキル化 / 感情マネージメント |
Research Abstract |
本年度は、主として臨床心理学の技法がどのような形で、本・メディア媒体、対人援助領域においてなされているのか、そしてそれらを「批判」するための社会学的視座の確立を目指した。また、それに向けた社会調査のあり方について検討を加えた。 具体的には「EQ」に代表されるような書物や、自己啓発・カウンセリングに関わる書物の言説分析を行う中で、心理学的な知がどのような媒体に転用されてきたのか、という点に関する系譜学的な考察を行った。さらに、その時代変遷をみる中で、「心」を対人関係や職務での成功を収めるための用具に化していくありさまを分析した。 そのことを通して、心理学的な知が<上>から人々を統制するのではなく、逆に心理学的な知を応用した技法を通して、人々が他者との「心」の交流や、「人間力」といった言葉に代表されるように、「心」のあり方に常にリフレクシブであり続けるように、誘導される点に、現代の「心」と権力作用との関連を見いだした。 これらの観点から、現代社会における心理主義分析・さらにはその批判は、これまでなされてきたような、「本当の・自然な」心からの疎外という論点では分析することが出来ないことを示した。それよりは、むしろ社会意識の変動の中で、人々が「本当の・自然な」心を作為的に作り上げていく中で、いわば<積極的な疎外>として分析されねばならないことを前提とした上で、いかに社会学的な批判の視座が確立出来るのか?といった点についての考察を深めた。 さらには、具体的な調査を行うに際して、「心」といった事象にどのようにアプローチが可能であるのかを、主として理論的に検討を行った。「心」は個人の「内面」にあるため、しばしば調査が困難であり、秘技化されやすいが。だが、論理的には他の事柄と等価でありうることを示した。
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