2007 Fiscal Year Annual Research Report
災害時のソーシャルワークとソーシャルサポートネットワークの構築に関する研究
Project/Area Number |
18730358
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Research Institution | Tokyo International University |
Principal Investigator |
中島 修 Tokyo International University, 人間社会学部, 専任講師 (80305284)
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Keywords | コミュニティ再生 / 災害時ソーシャルワーク / 大規模災害 / 継続的な生活支援 / 地域性 / 人材配置 / 長期的な復興支援 / 生活支援相談員 |
Research Abstract |
本研究は、初年度の中越地震の被災地である新潟県での研究成果を受けて、今年度は、コミュニティ再生に焦点化して研究を進めた。具体的には、大規模災害が起こった地域を訪問してインタビュー調査を行い、災害時の状況と災害後のコミュニティ再生に向けたソーシャルワーカーの取り組みを調査し、災害時のソーシャルワークにおいてコミュニティ再生の視点が重要であることを先進事例から明確にすることを研究目的とした。大規模災害の被災地として長崎県雲仙普賢岳、阪神淡路大震災、石川県能登半島地震、北海道南西沖地震の各地域を訪問しつつ、昨年7月に起こった中越沖地震の被災地である新潟県柏崎市、長岡市をも訪問し、被災地のソーシャルワーカーにインタビュー調査を行った。今年度の研究で明らかとなった点は、第一に被災地に共通して災害後10年以上が経過しても災害の影響が残っていること。第二に、近視眼的なボランティアの援助に対して、被災地のソーシャルワーカーは違和感をもっていたこと。第三に、被災地のコミュニティ再生には被災地を良く知っている人材が支援者として必要であること。第四、被災地の復興の取り組みを整理していくためには、被災地以外の関係者との共同作業による整理が効果的であること。以上の四点である。これらを整理すると、(1)長期的な復興支援、(2)地域性に基づく支援、(3)地域性を踏まえた人材配置、(4)被災地と被災地外との共同支援、という四つの視点が求められる。コミュニティディベロップメントが災害時におけるソーシャルワークの既存の方法であるとする意見もあるが、コミュニティを再び形成していく視点は、もともとコミュニティが形成されていない地域を形成することとは異なる支援方法が必要である。被災地住民の喪失感や失望感への対応は、コミュニティディベロップメントでは説明できない。阪神淡路大震災や中越地震で生活支援相談員が活躍している背景には、被災地住民の将来へ失望感や被災前の生活の喪失感が大きく影響している。これらの支援は、被災前の被災地を知っている人材にこそ担える役割である。災害時におけるソーシャルワークには、継続的な生活支援を行っていくために地域性と長期的な復興支援の視点を踏まえた専門職配置の必要性が明らかとなった。
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