2006 Fiscal Year Annual Research Report
ソーシャルワークにおける死別ケアの検討;自閉症及び認知症高齢者の看取りの実際
Project/Area Number |
18730361
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
佐藤 繭美 杏林大学, 保健学部, 助手 (90407057)
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Keywords | 死別ケア / 自閉症 / 認知症 / ソーシャルワーク実践 |
Research Abstract |
本研究では、人びとの生活を支えるソーシャルワーク実践において、当事者の終末期及び看取りの実態を明らかにし、社会福祉専門職に求められているソーシャルワーク実践やソーシャルアクションについて具体化していくことを目的としている。 初年度は、当事者の人生の終末期におけるケア及び援助の実態について明らかにするために、1)フィールドワーク及び2)インタビュー調査を実施した。フィールドワークでは、自閉症の人を家族にもつ親の会、認知症高齢者の家族の会に継続的に参加し、当事者の問題や、自閉症者と認知症高齢者に特有の共通課題等について話し合いを実施したとまた、看取りを行った施設などを見学しこ実際の問題・課題について話し合いを行い、次年度に実施する量的調査の項目の検討を行った。 さらに、上記2つのセルフヘルプグループメンバーを中心として、インタビュー調査を実施した。その結果、自閉症者、認知症高齢者共に、終末期におけるケアの課題として、「医療機関の理解」が重要かつ改善の必要のある中心問題として浮上してきた。自閉症者及び認知症高齢者ともに、「ガン」などによる闘病期間中は、社会福祉施設の利用が困難となり、医療機関への依存度が高くなる。しかしながら、医療機関は医療行為を行う場所であり、生活をする場ではない。そのため、自閉症や認知症という障害や疾病への理解が不足し、「点滴を引き抜く」「騒ぐ」という、何らかの要因があって引き起こされるパニックや混乱などが理解されにくく、介護をしている家族への精神的負担感が増大することが明らかとなった。さらに、医療機関と社会福祉施設との連携は非常に不足していることも明白であった。そのための対処方法として(医療機関や社会福祉施設・サービスへ頼ることのできなくなった家族自身が組織を立ち上げることも少なくないようである。欧米諸国では、医療機関におけるソーシャルワーカーの存在が当たり前であり、社会福祉サービスをつなげるだけでなく、当事者の精神的負担、特に死を迎える当事者家族への支援体制が整備されており、その点ではわが国の死別ケア体制の整備すらままならない状況にあることが伺える。次年度はこうした点を踏まえ、インタビュー調査の継続及び量的調査の実施を行い、さらなる死別ケアのあり方について検討していきたいと考えている。
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