2006 Fiscal Year Annual Research Report
高齢期就労問題をめぐる労働概念の定義過程に関する研究
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18730365
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Research Institution | Shizuoka Eiwa Gakuin University |
Principal Investigator |
柳沢 志津子 静岡英和学院大学, 人間社会学部, 助手 (10350927)
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Keywords | 労働と生活 / 生活問題 / 労働問題 / 労働政策 / 生活保障政策 / 地域型労働者 / シルバー人材センター / 構築主義 |
Research Abstract |
本研究は、高齢期の就労問題に関わる国の制度である「シルバー人材センター」創設期に語られた論理と「地域型労働者」の当事者組織として位置づけられる「高齢者協同組合」、「東京土建一般労働組合」が福祉事業を開発するに至るまでの論理を取り上げ、第一にらそれぞれの政策において「職業生活」「家庭生活」「地域」をどのように関連付け、高齢期の「生活問題」、「労働問題」を語っているのかを明らかにし、第二に、国と当事者組織の活動という二つの組織関係から高齢期の労働概念が政策上でどのように定義づけられていったのか、その過程を構築主義的に描き出すことを目的とする。 本年度は、文献の収集と分類整理、関係機関を対象にした聞き取り調査のための準備を行った。 本研究のキー概念となる「職業生活」「家庭生活」「地域」の3つの概念の関係性を検討するため、国内の生活構造論に関する基本文献を収集し、分類整理を進めている。また「高齢者協同組合」、「東京土建一般労働組合」の資料収集とこれまでの調査結果について追加分析を行った。当事者組織の取り組みでは、福祉事業が開発される中で「一般雇用型の労働」と「生きがいを目的とした労働」という2つの質の違う労働のあり方が認められた。この2つの労働は、介護、家事援助、移送、リフォーム事業など高齢期の「家庭生活(生活領域)」を支える仕組みの中から誕生したものである。いわば、「職業生活(企業領域)」と「家庭生活(生活領域)」の重なりを広げたことにより雇用創出と介護サービス整備の両者に成功したともいえる。一方、国の政策を支える引退過程では、活動の比重が「企業領域」から「生活領域」へ段階的に移行することで「労働の質」が変化すると説明される。現段階では、当事者組織と国の生活保障政策の中で「労働問題」と「生活問題」の描き方に若干の差異が予測できる。次年度は、文献研究と関係者への聞き取り調査を実施し、高齢期の活動領域の枠組みについて、国と当事者組織の制度を比較検討する。
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