2007 Fiscal Year Annual Research Report
高齢期就労問題をめぐる労働概念の定義過程に関する研究
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18730365
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Research Institution | Toyo Gakuen University |
Principal Investigator |
柳沢 志津子 Toyo Gakuen University, 人文学部, 専任講師 (10350927)
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Keywords | 労働と生活 / 生活問題 / 労働問題 / 労働政策 / 生活保障政策 / 地域型労働者 / 高齢者協同組合 / 構築主義 |
Research Abstract |
本年度は、高齢期の活動領域の枠組みを検討し、高齢期就労問題に対する国と当事者組織の制度を比較することを課題とし、文献の収集と分類整理、関係者を対象にした聞き取り調査を進めた。 先行研究では、従来の引退過程の考え方に加え、高齢期就労問題において「生活」というフィルタをかけて描く試みがみられる。加えて国際機関における議論をみると、例えばILOが掲げる「ティーセントワーク」(decent work)では労働を含めた生活全般に焦点が当てられており、WHOを中心に展開される「アクティブエイジング」(active ageing)では、高齢労働者を「生活者としての労働者」と位置づける。近年、高齢期就労問題をめぐる議論は、「労働と生活」の相互関連性が指摘されつつある。「労働と生活」の相互関連性を問題発見の場面から探ると、当事者組織の一つ「高齢者協同組合」の場合、関係者の聞き取りから、メンバーの高齢化による生活水準低下の解決手段に、生活保障政策の一つとして就労機会の創出が発想されていることが分かった。このとき労働の内容に、所得稼得の側面、自己実現と社会参加の側面という異なる価値観が盛り込まれている。「高齢者協同組合」のメンバーは、「働くのか、働かないのか」の選択以前に、「働きたいのに働けない」状況のなかで「高齢」という事情が重なり、高齢期の生活が厳しい状況におかれる。企業の雇用関係に置かれない、高齢期にあるという二つの特徴を抱えるメンバーが集まる当事者組織では、高齢期の就労問題の解決にあたり、「労働と生活」の相互関連性が強く意識されていたことが分かる。 次年度は、関係者への聞き取り調査を完了させ、国と当事者組織が「高齢期の労働問題」をどのように捉え、労働概念を定義づけていたのかについて検討を進める。
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