2006 Fiscal Year Annual Research Report
"男女平等の判断基準"からみた男女平等に関する合意形成の促進・妨害要因の分析
Project/Area Number |
18730382
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
宇井 美代子 筑波大学, 大学院人間総合科学研究科, 準研究員 (80400654)
|
Keywords | 男女平等観 / 男女平等の判断基準 / ジェンダー / 合意形成 / 男女共同参画 |
Research Abstract |
現代日本では、個人のよって男女平等と捉える男女のあり方が異なるため、男女平等のあり方に関して意見が対立する場面が多く見られる。本研究では、実際に男女平等のあり方に関する合意が得られずに、男女共同参画条例案が廃案となった地方議会の議論に着目した。多様な男女平等間を捉えるための理論的枠組みである"男女平等の判断基準"(男女の役割分担状況が男女平等か否かを評価する際に用いられる基準)の視点から、条例案が廃案となった地方議会の議論の様相を、条例が制定された地方議会の議論の様相と比較することによって、男女平等のあり方に関する合意形成を妨げる要因の検討を行った。最初に、男女平等の判断基準の視点から各議会の議事録を分析した結果、廃案議会のおける知事派と保守政党派との間、また、制定議会における行政側と議員側との間ではそれおぞれ、異なる価値判断に基づく男女平等のあり方が主張されていた。この結果から、異なる判断基準に基づいて、異なる男女平等のあり方を主張することは、必ずしも合意形成を妨げないことが示唆された。次に、廃案議会の議事録を詳細に分析した結果、議論の視点をずらすような議論のなされ方が複数見出された。例えば、個人の能力を生かした社会を実現すべきであるとの"個人の能力の原理"という判断基準に基づく男女平等のあり方を主張した知事派に対して、保守政党派は、知事派の主張を別の判断基準の観点から捉え直していた。具体的には、保守政党派が知事派の主張を、男女の差をなくして中性化を促す"均等配分の原理"という判断基準の基づく男女のあり方を推進しようとしていると捉え直し、批判していた。以上の結果から、合意形成が妨げられるのは、異なる判断基準に基づき異なる男女平等のあり方が主張されるためではなく、別の判断基準の観点から議論の論点がずらされるなどによって議論が収束しなくなるためであることが示唆された。
|