2008 Fiscal Year Annual Research Report
オンライン・コミュニティにおける社会的影響過程に及ぼす識別性と匿名性の効果
Project/Area Number |
18730383
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Research Institution | Sapporo University |
Principal Investigator |
森尾 博昭 Sapporo University, 経営学部, 准教授 (80361559)
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Keywords | 社会的影響過程 / 社会的認知 / 匿名性 / 識別性 / 社会的アイデンティティ / 対人認知 / コミュニケーション / CMC |
Research Abstract |
社会心理学者ラタネは、人々がお互いに影響を与えつつも社会の多様性が維持されるメカニズムを, シミュレーションを用いてモデル化し, ダイナミック社会的インパクト理論(DSIT)を提唱した. 本研究はこのDSITの理論的展開及び実証を軸とする. 本研究では特に, 近年急速に普及したコンピュータによるコミュニケーション(CMC)に対して, DSITのモデルがどこまで適合しうるのかを検討した。まず、暴力行動とテレビ番組の視聴時間の関係についての大学生の意見を採集した。これをCMCにおけるコミュニケーションの題材であると想定し、刺激として用いて様々な社会的属性の認知がどのように行われているかを検討する実験を行った。実験の結果、他者のメッセージの認知には、メッセージ内容に加え、自己の持つ態度が大きく影響していることが明らかとなった。次に、人工的な環境において、長期的に被験者がお互いにコンピュータを通じてコミュニケーションを行う環境を作り出すことにより、対人関係の継時的な変化を検討することを目的とした実験のデータの再分析を行った。この実験では大学生120人の被験者が参加し、対人関係や政治に関連した項目などについての意見を計6週間に渡って交換した。分析の結果、短期間ではメッセージの質がコミュニケーションの相手に対する対人魅力に影響力を持っていた一方で、メッセージの量はまったく影響力を持たなかった。一方長期的には、メッセージの質ではなく量が、最終的に形成される対人魅力を大きく規定することが明らかとなった。この分析結果は、オンラインと現実とのアイデンティティの乖離が存在する状態において、対人魅力の規定因としての接触頻度を社会的距離として理解することの妥当性を示しているといえる。
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