2007 Fiscal Year Annual Research Report
喪失体験後の心理・社会的変化のメカニズムに関する実証的研究
Project/Area Number |
18730393
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
池内 裕美 Kansai University, 社会学部, 准教授 (50368198)
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Keywords | 喪失 / 遺品 / 供養 / 悲嘆 / アニミズム / 形見 / 愛着 / カタルシス |
Research Abstract |
1.研究目的: 「喪失」とは、愛情や依存の対象(大切な人やモノ、環境や地位など)をその死や生き別れによって失う体験のことである。本研究の主目的は、喪失体験後の心理・社会的変化や、喪失対象における「形見」の心的機能について検討することであり、本年度は郵送調査2回、集団面接調査1回、面接調査1回の計4回の大きな調査を実施した。ここでは前年度からの継続研究である人形供養に関する郵送調査結果を報告する。 2.研究方法: ・調査目的→自発的喪失の一つのフィールドとして「人形供養」に着目し、供養のもたらす心理的効果や、奉納者と非奉納者(統制群)との性格特性の違いについて検討すること。 ・調査方法→(1)奉納者:門戸厄神東光寺(兵庫県西宮市)に人形供養に来られた方に質問紙を渡し、後日郵送にて返信して頂く。配布数1000、有効回答数396(回収率39.6%)。 (2)統制群:(1)と比較するために、奉納者以外にもモノへ愛着や人形供養に関する意識調査を実施(郵送留置法)。調査会社のモニターを使用。配布数250、有効回答数215(回収率86.0%)。 ・調査時期→(1)奉納者調査:2007年9月〜11月(2)非奉納者調査:2007年11月〜12月 3.研究成果(今年度の調査で得られた主な知見): (1)供養後の心理的変化については、約30%の人が"安心した、ホッとした"などのカタルシス効果(浄化作用)に関する内容を挙げていた(供養のカタルシス効果)。 (2)また供養した人形の存在意義について尋ねたところ、約20%の人が"心を癒してくれる存在"、"自分自身の大切な出来事を思い出させてくれる存在"として捉えていた。 (3)奉納者は統制群に比べて宗教に関する価値意識が高く、非論理的であり、さらにアニミズム尺度の全ての下位概念(自然物の神格化、所有物の人格化、所有物への愛着)の傾向が強いことが見出された。
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