2006 Fiscal Year Annual Research Report
社会的判断における認知的な主観的経験の役割に関する研究
Project/Area Number |
18730397
|
Research Institution | Konan Women's University |
Principal Investigator |
森 津太子 甲南女子大学, 人間科学部, 助教授 (30340912)
|
Keywords | 社会系心理学 / 社会的認知 / 社会的判断 / 主観的経験 / 情報処理モデル |
Research Abstract |
本研究の目的は、これまで異なる領域で検討されてきた「認知的な主観的経験」をめぐる現象を整理し、社会的判断に果たす役割について、統一的なモデルを構築することである。本年度は、先行研究を網羅的に収集し、暫定的なモデルを作成することを目的として研究を進めてきた。具体的には、認知的な主観的経験として理解可能な現象の一つ一つについて、1)情報処理過程のどの段階(入力段階、出力段階など)に関係する経験なのか、2)どのような社会的判断に影響するものなのか、3)主観的経験の実験操作としてどのようなものが用いられているか、またそうした操作の相違によって、社会的判断への影響は異なるのか、といった点を整理し、統合的な枠組みの中に個々の現象を位置づけていくという作業である。例えば親近感(familiarity)の場合、1)情報の入力する段階で感じる主観的経験で、2)親近感を覚える刺激に対しては、好意度が上がる(好意度判断)、有名なものだと思いやすい(有名性判断)、真実だと思いやすい(真実性判断)といった効果が見られる。また3)親近感の操作としては、当該刺激の呈示回数を変化させる、刺激の呈示時間を変える、刺激呈示の際の図と地のコントラストを変える、韻を踏む(文章刺激の場合)などがあるが、この中では呈示回数の操作がもっとも有効である。本年度の研究では、このような研究知見の整理を、親近感だけでなく他の認知的な主観的経験(既知感、知覚的流暢性、検索容易性、舌端現象など)についても行い、それらの相互関連性を検討していった。ただし、認知的な主観的経験に関する研究は多領域にわたり、研究数も膨大なため、すべての先行研究の整理・統合を終えるには至らなかった。また、質的レビューに加え、メタ分析による量的なレビューを行うことを計画していたが、それもできなかったため、これらの点は次年度の課題としていきたい。
|