2007 Fiscal Year Annual Research Report
社会的判断における認知的な主観的経験の役割に関する研究
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18730397
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Research Institution | Konan Women's University |
Principal Investigator |
森 津太子 Konan Women's University, 甲南女子大学, 准教授 (30340912)
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Keywords | 社会系心理学 / 社会的認知 / 社会的判断 / 主観的経験 / 誤帰属 / 情報処理モデル |
Research Abstract |
本研究の目的は、これまで個別に検討されてきた「認知的な主観的経験」をめぐる現象について、それが社会的判断にどのような影響を及ぼしているか、またそれはどのようなメカニズムに基づくものかを、統一的な枠組みの中で整理し、モデルを構築することである。本年度は昨年度に引き続き、先行研究を詳細にレビューすることを継続してきた。具体的には、認知的な主観的経験として解釈可能な現象について、質的・量的(メタ分析)両面からレビューし、共通性を探ってきた。調査対象となったのは、知覚的流暢性、検索容易性、親近感、既知感、舌端現象などの研究である。その際に着目したのは、当該の主観的経験が、1)情報処理過程のどの段階(入力段階、出力段階など)に関係する経験で、2)どのような社会的判断に影響しているか、また、3)主観的経験の導入にはどのような実験操作が使用されており、4)それがどのような主観的経験を生み出していると仮定されているか、などである。本研究が対象とする主観的経験は、社会心理学のみならず、認知心理学の分野においても広く研究対象となっているため、レビューにあたっては両領域の研究を網羅的に収集した。その結果、認知心理学領域の研究は、少なくとも近年に限定すれば、情報の入力段階の認知的主観的経験(知覚的流暢性など)を扱ったものが多く、操作も刺激の知覚的特性を利用したものが多いのに対し、社会心理学領域の研究では、出力段階の認知的主観的経験(検索容易性)を扱ったものが多く、記憶を思い出させるような操作が多いこと、しかしこうした違いはあるものの、両者が仮定している情報処理過程(誤帰属)は類似しており、その検証のための手続きにも類似性が見られるため、共通したモデルが構築可能であるなどがわかっている。今後、レビューをもとに構築した暫定モデルを更に精緻化し、その妥当性を実証的に検討する研究を進めていく予定である。
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