2008 Fiscal Year Annual Research Report
社会的判断における認知的な主観的経験の役割に関する研究
Project/Area Number |
18730397
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Research Institution | The Open University of Japan |
Principal Investigator |
森 津太子 The Open University of Japan, 教養学部, 准教授 (30340912)
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Keywords | 検索容易性 / 主観的経験 / 社会的判断 / 社会的認知 / 情報処理モデル |
Research Abstract |
本研究の目的は、「認知的な主観的経験」をめぐる現象について、それが社会的判断にどのような影響を及ぼしているか、またそれはどのようなメカニズムに基づくものかを、統一的な枠組みの中で整理し、モデルを構築することである。昨年度までは、認知的な主観的経験として解釈可能な現象すべて(検索容易性、知覚的流暢性、親近感、既知感、舌端現象など)について網羅的にレビューしてきたが、研究内容が多岐にわたるために、それらの知見を十分に収斂させることが難しかった。そこで本年度は、レビューの対象を、社会心理学でもっとも研究が多い検索容易性効果に敢えて限定して、より精緻な検討を行うことで、モデル構築の足がかりにすることにした。 これにより、(a)検索容易性は多様な社会的判断に影響をもたらしていること、(b)その効果サイズは概して大きいものの、(c)判断のタイプによって大きさは変わること(態度判断や行動頻度の推定では大きいが、特性判断ではあまり大きくない)、(d)判断対象の種類によつても変わること(もっとも効果が大きいのは事物・事象に関する判断で、次いで自己の判断で効果が大きい。一方で、'他者判断では効果が出にくい)、(e)情報の診断性の有無が影響の方向性を左右すること(診断性がある場合には判断に影響を与えるが、診断性がない場合は影響を与えなかったり、反対方向の影響を与えたりする)、(f)一般に検索容易性効果はヒューリスティック処理によってもたらされる効果と考えられているが、それだけでは説明がつかない研究知見があること、(g)検索容易性操作の操作チェックのタイミングによって効果の大きさや方向性が変わる可能性があること(一部の知見がアーティファクトである可能性があること)、などがわかった。そこでこれらの知見をもとに、争点を解決する実験を計画するとともに、暫定モデルの構築を試みた。
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