2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18730402
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
深谷 優子 Tohoku University, 大学院・教育学研究科, 准教授 (00374877)
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Keywords | 教育系心理学 / 文章理解 / 読解力 |
Research Abstract |
本研究は、複数の文章が同時に呈示された構成の文章群を、「包括的なテキスト(Comprehensive text)」と呼び、その読解学習過程について心理学的に検討し、読解力育成に向けたプログラム開発を行うことを目的としている。20年度は,前年度の研究成果(読解力育成プログラムに向けての理論的な整理と,部分的な読解力育成プログラム二種類の実施およびその効果の検証)を踏まえて, より総合的な読解力育成プログラムを提案し, その効果を検討した。 共同推敲において, 仲間からのコメントの読解が意見文に与える効果について量的に検討したところ, 共同推敲後のほうが字数も多くなっていたことから, 参加者はコメントの内容を意見文に反映させていたといえる。また, 相関の結果より,1) はじめの意見文の字数が多い場合, より多くのコメントが返されること,2) その場合でも共同推敲後にはさらに字数が増えること,3) はじめの意見文で字数が少なくても, 共同推敲後の意見文では字数が増えること,4) 受けたコメントの量(字数)が多いほど, 共同推敲後の意見文の字数が増加すること, などが明らかとなった。このように共同推敲が意見文産出の支援となること, そこに読解プロセスが重要な要因として介在している点について指摘した(日本教育心理学会にて発表)。 ピアレビューを用いた共同推敲は, 読解と作文の両者を射程に入れたモデルに基づいている。すなわち, 推敲プロセスを個人内からピアとの間に拡張して共有する3フェイズモデルで文章産出(作文)およびその精緻化にアプローチしている。この教授技法の理論的背景および効果をもたらす要因やプロセス,適用可能性や今後の課題について検討し, ピアレビューを用いた共同推敲が包括的なテキストの読解力育成の支援となりうることをあらためて示し, 読解力育成プログラムとして提案した(東北大学大学院教育学研究科年報にて発表)。
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