Research Abstract |
昨年度までの研究結果を基に, 個々人が持つ「私語に対する態度」の相違(個人差)という要因に着目し, 個人の態度が教室全体に及ぼす影響について, ダイナミック社会的インパクト理論(e.g., Latane,. Nowak & Liu, 1994 ; DSIT)やゲーム理論(Axelrod, 1997)などを用いて考察した。その結果, 「授業に関する私語」の方が「授業と無関係の私語」よりも, 教室内に伝播しやすい傾向が示唆された。また, 学生が, 他の学生の私語を注意すること'(学生同士の注意)によって感じる心理的な負担などについても質問紙調査によって検討した。しかし, 座席位置を独立変数とした分散分析を行ったが有意な効果は示されなかった。 さらに, DSITの規則に, 「ある一定の確率で、他のセルの状態を参照せずに『私語状態ないし沈黙状態のいずれかに』変容する」という規則を加え, 「個人的要因」と「環境的要因」という2つめ要因によって, 教室における私語が伝播する過程について分析した』この際, 個人的要因によって状態変容を行う確率をN-prob, この方法で私語状態になる確率をNW-probとした。その結果, NW-probが. 60以上である時は, N-probと私語率の関係は非線形的なものとなることが示された。また, 近傍距離範囲を5.0とした場合ないしムーア近傍を用いた場合は, ノイマン近傍を用いた場合よりも, 私語が教室に伝播する「閾値」が高くなった。このことなどから, 私語を抑制する方法として「個々の学生が, 自分の隣にいる人たちに対して等しく気を配る」ように促すことが有効となりうると考察された。 この他, 開発したシミュレータや調査の結果を教材・資料として, 「授業中の私語」に関する授業を行い, その効果について質問紙調査を行った。収集したデータについては現在分析中である。
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