2006 Fiscal Year Annual Research Report
コミットメント問題としての被害者通報問題 いじめ被害者を中心として
Project/Area Number |
18730415
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Research Institution | Sapporo International University |
Principal Investigator |
大野 俊和 札幌国際大学, 人文学部, 助教授 (70337088)
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Keywords | いじめ / 被害者 / コミットメント問題 / 教育系心理学 |
Research Abstract |
研究の目的は、いじめの被害者がその被害を通報する際に生じる不安、すなわち"通報不安"を減少させる制度的・構造的要因について詳細に実証的手法を用いて検討することであった。具体的には、学校でのいじめ問題解決の具体的目標として被害者から教師への通報の増加を挙げ、通報の増加を達成する上で必要となる、通報不安の減少という問題について検討することであった。 研究開始年度である18年度においては、主に二つのアプローチからの検討が行われた。第一のアプローチは文献的検討であった。具体的には、これまでに経済学や社会学、人類学、社会心理学の分野で扱われてきたコミットメント問題についての理論研究の文献、ならびに、国際紛争や誘拐事件でのコミットメント形成を扱った文献の収集・検討を行った。第二のアプローチは、いじめに近い立場の人々から得られたインタビューデータの分析であった。以上のアプローチから得られた知見は一つにまとめることができる。つまり、現状では、当事者である生徒たちが納得するような、加害者にとって効果的な処罰が現状では設けられていないと生徒たちも教員たちも考えているということである。被害者が通報するかどうかに関わる要因として、加害者の処罰といった、通報が結果的に報われることが重要である。しかし、現状では、いじめに関わった生徒たちに与えるルールと罰則は不明確でかつ未整備であり、多くの場合、生徒や教師たちはそのルールや罰則についてよく知らないのである。 また、現在、検討中の罰則についても多くの生徒や教員たちは、その罰則を仮に実施したとしても効果がないと考えていることが明らかになった。
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