Research Abstract |
解決志向アプローチ(以下,SFA)の質問(特に,ミラクル・クエスチョン:以下,MQ)の効果について,1)セラピスト(以下,Th)を対象とした面接調査,2)面接逐語録の談話分析をもとに検討した。 1)では,SFAのTh8名を対象に半構造化面接を実施し,MQなどの質問がクライアント(以下,CI)に及ぼす効果をThがどのように捉えているかを調べた。回答内容をKJ法によってまとめた結果,MQの効果は「未来への視点の転換」,「問題から目標への視点の転換」,「視点・考え方の偏りへの気付き」,「長所・リソースの認識」,「視点・考え方の肯定的変化」,「未来への希望の出現」,「目標の明確化」,「意欲・自信・気分の向上」などに分類された。そこでMQの効果には,視点の転換,視点・考え方の肯定化,目標の明確化,意欲・自信・気分の向上などがあると考えられる。 2)では,SFAのマスターThの面接ビデオを分析した。まず面接の全発話を内容によって分類し,次に面接を内容上のまとまりによって区切り,談話構造を明らかにした。それをもとに,MQ前後のClの発話の内容と量の変化を調べた結果,MQ後に「問題」(Clが抱える問題やその影響など)に関する発話が減少し,「解決」(Clが自分の生活の中で変えたいこと,変えたいことに関連することなど)に関する発話が増加していた。特に,解決に関する発話のうち,「解決後の状態の想像」,「解決への意志の表明」,「ポジティブな予測」,「過去の体験と行動へのポジティブな評価」の発話が増加していた。そこで,MQの効果として,問題に焦点が当たった思考から解決に焦点が当たった思考への転換,過去や未来への見方の肯定化などがあると考えられる。MQなどSFAの質問の効果について,データをもとに探索的に検討した研究はこれまでになく,本研究はSFAの質問の効果を明らかにする上での貴重な資料となる。
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