2006 Fiscal Year Annual Research Report
自閉症者における視覚の特異性と可塑性についての実験心理学的検討
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18730464
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
田谷 修一郎 金沢大学, 人間社会環境研究科, 21世紀COE技術員 (80401933)
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Keywords | 自閉症 / weak central coherence / ロッド・フレーム錯視 |
Research Abstract |
近年,自閉症の特徴のひとつである社会性の障害が一種の視覚障害に起因するという仮説が注目を集めつつある.この仮説は,自閉症者は健常者に比べて断片的な視覚情報を意味のある全体に統合する能力が脆弱である(weak central coherence)と考えるものである(WCC仮説).視覚情報の統合能力に障害を有すると,顔を眼,鼻,口といったパーツ別にとらえることになり,表情から他者の意図や感情を読み取ることが困難になる.このことは自閉症者の社会性障害の一因となっている可能性がある. 本研究ではロッド・フレーム錯視(RFI)を用いてWCC仮説の検討を行った.RFIとは線分の見かけの傾きがそれを囲む正方形の枠組みの傾きに影響されるという錯視である.例えば,客観的に垂直な線分は時計回りに傾いた正方形で囲まれると反時計回りに傾いて知覚される.WCC仮説で仮定されているように自閉症者が視覚情報の断片的な処理を行っているならば,RFI図形における垂直線分と枠組みは個別に知覚されることになり,したがって自閉症群におけるRFIの錯視量は典型発達群よりも小さくなることが予測される. 実験では医師により自閉症と診断された11名,および自閉症群と実年齢・性別を揃えた典型発達群11名の間でRFI錯視の錯視量を比較した,この結果,WCC仮説からの予測に反し,錯視量は自閉症群と典型発達群で差が無いことが示された.この結果は,RFI錯視の生起に関わると考えられる初期の視覚情報処理には自閉症者と典型発達者の間で違いが無いとことを示唆している.
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Research Products
(1 results)