2006 Fiscal Year Annual Research Report
音楽の認知過程と情動及び聴取空間への影響に関する潜在記憶と注意の観点からの研究
Project/Area Number |
18730468
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Research Institution | Hokusei Gakuen University |
Principal Investigator |
後藤 靖宏 北星学園大学, 文学部, 助教授 (30326532)
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Keywords | 認知科学 / 音楽認知 / 常道喚起 / 聴取空間 / 潜在記憶 |
Research Abstract |
基礎分野と応用的分野の研究とを互いに関連づけながら、次年度以降の基盤となる知見を得るための研究を開始した。本年度は特に、「癒し」の感覚に注目し、その観点から音楽と聴取空間の相互作用についての基礎的な研究を行った。 まず1つめの研究として、音楽情報の潜在記憶のうち、実験的な証明に初めて成功したリズムの潜在記憶についての研究をさらに発展させた。これまでに、音楽のリズム知覚に必須な"拍節的体制化"の処理と、顕在/潜在記憶との関わりについて研究を行ってきた結果、音価、音高及び音色の3種類の物理的特性が知覚的プライミングに関わる成分であることがわかっている。これをふまえて、18年度は"拍節性"という心理的特性を変数として実験を行う。拍節性については、拍節的体制化が可能な「拍節音列」と困難な「非拍節音列」を準備し、拍節構造の知覚がリズムの潜在記憶とどのように関わっているかについて調べた。"全体的処理を要する符号化"と"局所的処理による符号化"の2種類の符号化処理を課して実験を行った結果、両者間の密接な関わりを示唆する結果が得られた。次に、これをふまえて、いわゆる"癒し音楽(healing music)"をBGMとした場合に、癒しをコンセプトとした居住空間の評価にどのような影響を与えるのかについて実験的に検討した。「通常空間」と「癒し空間」をそれぞれ実際に設営して、様々な音楽をBGMとして用い、音楽が空間に適しているか、および空間そのものの印象評定を行った。この結果、癒し効果が高い音楽が,より癒し空間に適していると判断された。 また、癒し効果が高い音楽がBGMの場合は、空間をより「癒される」と感じることがわかった。 さらに、聴取空間の照明を変数として、照明と聴取空間の評価の関係について検討した。「癒し照明(白熱灯のフロアランプを間接的に使用したもの)と「通常照明」(蛍光灯で部屋全体を照らすものを準備し、被験者に印象評定をさせた結果、まず聴取空間の印象が大きく働き、照明はあくまでも補助的に作用することが明らかになった。
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