2008 Fiscal Year Annual Research Report
音楽の認知過程と情動および聴取空間への影響に関する潜在記憶と注意の観点からの研究
Project/Area Number |
18730468
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Research Institution | Hokusei Gakuen University |
Principal Investigator |
後藤 靖宏 Hokusei Gakuen University, 文学部, 准教授 (30326532)
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Keywords | 認知科学 / 音楽認知 / 情動喚起 / 聴取空間 / 潜在記憶 |
Research Abstract |
研究の総括として、計算論的モデル構築・実装とシミュレーションによる妥当性の検証を行った。 これまでの研究で、1)リズム知覚過程における潜在記憶の役割、2)音楽による情動の喚起の発生時点と変化時点に関する、生理的な変化と自身のメタ的認知との関係、3)音楽認知と、音楽聴取空間の相互作用、が明らかとなった。情動の喚起に関するパラメータとしては、「暗意-実現モデル」の考え方を取り入れ、「先行音により後続音が期待され、具体化された後続音によって先行音の確認や見直しを図る連続的な過程」と捕らえた。予測が実現された場合は「満足感」などの快感情が、予測が不適切であったり実現が遅延したりする場合には「違和感」や「いらだち」などといった不快感情の感覚がひき起こされると仮定した。 さらに、「楽曲の特徴及びその認知過程」と、「空間に対する注意の向けられ方の関係」との関係を系統的に分析し、聴取空間の違いによる音楽認知過程の特徴をパラメータとして組み込むことにより、既存のモデルでは対象外であった音楽の聴取環境との関わり方ついてもモデル化できた。こうしたモデル化の作業は、人間の基本的な音楽認知過程、そこで受ける「感興性」などの情動的側面、および、音楽聴取の環境との関わりについての強力な説明力をもつ、人間の音楽行動をより包括的に説明し得る仮説の提案を意味することとなった。
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