2006 Fiscal Year Annual Research Report
概念情報に基づいた視覚的注意の誘導と抑制に関する研究
Project/Area Number |
18730470
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Research Institution | University of the Sacred Heart |
Principal Investigator |
永井 淳一 聖心女子大学, 文学部, 講師 (10343104)
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Keywords | 視覚的注意 / 視覚物体認知 / 概念 / 視覚探索 |
Research Abstract |
本年度は、次元加重・探索非対称性・先行呈示探索の三つのパラダイムを用いて、視覚的注意の誘導・抑制のメカニズムと知識・概念との関係を検討した。 次元加重の実験では、目標刺激が常に同一の概念(動物または人工物)で定義されるブロックと、目標を定義する概念が試行間で変化するブロックを設けて比較した。その結果、前者のブロックでは後者に比べて探索が容易に行われるという結果が得られ、概念情報によって次元加重と同様の促進効果が生じることが示された。 探索非対称性に関しては、先行研究において、倒立呈示された物体の中から正立呈示された物体を探索する場合の方が、その逆の場合よりも探索が困難であることが報告されている。本研究では、物体の色が探索非対称性に及ぼす影響を検討した。その結果、物体が不適切な色で呈示された条件(例:バナナが青で呈示された場合)では探索非対称性が生起したが、物体が適切な色で呈示された条件では探索非対称性が消失する傾向が認められた。 先行呈示探索のパラダイムは、妨害刺激の一部を先行して呈示した後、標的刺激を含む残りの刺激を追加して呈示するというもので、この場合、標的の探索時間は先行呈示された妨害刺激の影響を受けず、あたかも後続呈示された刺激のみの中から探索が行われうることが知られている(先行呈示効果)。本研究では、個々の探索刺激にひらがな文字を使用し、文字を正立呈示した場合と倒立呈示した場合を比較する実験を行った。その結果、文字の呈示方向にかかわらず、頑健な先行呈示効果が生起した。 まとめると、次元加重・探索非対称性の実験では、概念や色に関する知識によって目標刺激への注意の誘導が生じることが示され、先行呈示探索の実験では、文字の方向に関する知識によって先行刺激に対する抑制効果が生じないことが示された。
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