2006 Fiscal Year Annual Research Report
音楽の感性処理における複合性および相互作用に関する研究
Project/Area Number |
18730476
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Research Institution | Hiroshima International University |
Principal Investigator |
荒生 弘史 広島国際大学, 心理科学部, 講師 (10334640)
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Keywords | 音楽 / 和音 / 感性 / 感覚知覚 |
Research Abstract |
和音は音楽の骨組みを支える主要な要素の一つであり、その感性を問題にするとき、次の二つの切り口を持つ点で、際立ってユニークな視点を提供する。第一に、和音はそれが単体で持つ「響き」の点ですでに感性的な処理を喚起する点である。第二に、和音は単体を越えて複数では、通常、楽曲やフレーズごとに調性に基づいて組織化される面があり、全く同一の和音であっても文脈が異なればその印象も大きく異なる点である。本研究では、これらの和音の感性処理の複合性に着眼し、それぞれの処理の仕組みを個別に確認することから検討を始め、両者の間の相互作用の性質や各処理の優先性や自動性について明らかにすることを目標としている。初年度である平成18年度は、聴覚実験に適した実験環境および実験機材の整備を行い、和音単体が喚起する感性処理のうちpleasantnessの次元に絞り、実験システム全体の環境特性や動作の確認をかねて予備的実験を行った。実験環境および機材の整備においては、研究機関内に簡易防音設備を備えた実験ブースを設置し、その内部の音響特性を吸音材を用いて改善したうえで、実験機材をセットアップした。予備実験では、セットアップした機材のプログラミングを行い、聴覚刺激を適切に呈示できることを確認しつつ、予備的データを取得した。長3和音のうち、一部の音を通常の周波数から変化させたものと、そうでないものを対比させ、pleasantnessの評定を行うと、前者の方がpleasantnessの評定値が低くなることが確認できた。以後、予備的実験で得られた知見の確認および拡張を行うとともに、これらの評定値や他の行動指標が、先行する音楽文脈によりどのように変化するかを検討し、研究目的を達成する予定である。
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