2008 Fiscal Year Annual Research Report
高等学校カリキュラムにおけるキャリア教育と教科教育との関連性に関する調査研究
Project/Area Number |
18730485
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
岡部 善平 Otaru University of Commerce, 商学部, 准教授 (30344550)
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Keywords | 高等学校 / キャリア教育 / 教科教育 / カリキュラムガイダンス / キャリアプラン |
Research Abstract |
本研究は、高等学校でのキャリア教育と教科教育かとのように結ひついたとき、生徒のいかなる行動を引き起こすのかについて、体系的な検討を行うものである。本年度は以下の点について、理論的、実証的検討を行った。 1. 理論的検討 これまでの研究成果を踏まえ、生徒の教科学習への取り組みをいかに促進するかという観点からキャリア教育の在り様を再構築するための理論的枠組を考察した。とくに本研究が着目したのが、キャリア教育としてのカリキュラムガイダンスの役割と意義である。従来のカリキュラムガイダンスは、学習者に将来の目標およびその目標を達成するために何をする必要があるのか考えさせることを通して学習の見通しを形成し、学習者の内発的動機づけを高める手法として用いられてきた。それに対して、主に近年の欧米におけるガイダンス研究は、社会的公正め観点から、学習者が回顧的に自らの学習経験を意味づけ、再確認する契機としてガイダンスの在り方を再定義しようとしている。また、これらの先行研究の検討から、学習経験の振り返りと意味構築の具体的な手法として、「キャリアブラン」の作成の有効性が示唆された。 2. 実証的検討 上記の理論的検討を受け、キャリア教育におけるカリキュラムガイダンスの役割と意義について事例分析を行うこととした。具体的には、北海道地区のキャリア教育推進校3校(普通科2校、総合学科1校)での資料収集、生徒および教員への聞き取り調査を実施した。その結果、(1) 「将来の目標では学習を動機づけられないタイプ」の生徒が一定数存在し、これらの生徒に対して「見通し」としてのカリキュラムガイダンスはその有効性に一定の限界があること、(2) また、学から進路先への「移動期」におけるサポートが看過されがちであることが分かった。こうした状況に対して、事例校であるH高校において実施されていた「キャリアプラン」作成の実践は、きわめて示唆的な試みであった。総合学科であるH高校では、生徒は1年次にガイダンス科目である「産業社会と人間」においてキャリアプランを作成し、さらに3年次の総合的な学習の時間」において再度キャリアブランの作成を実施している。生徒は継続なキャリアプラン作成での振り返りを通して多様な語り展開し、自らの関心や目的、展望の変化の過程を認識していくよう促される。こうしたカリキュラムガイダンスの実践は、学校から進路先への「移行支援」含めた、生徒の状況の変化に対するフォロー機能としての役割を果たしていた。また、こうした「振り返り」の機会は、生徒がカリキュラムに対していかなる意味を付与しているのかを把握するための質的資料収集の場ともなることが明らかになった。以上の結果は、キャリア教育としてのカリキュラムガイダンスを教科教育も含めたカリキュラム評価・改善の資料収集の場として再構築していくことの重要性を示唆している。
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