Research Abstract |
本年度は,現地調査を中心に行った。他州の教育改革の状況の調査として,元ハンブルグ大学のグードヨンス博士へのインタビューと総合制学校への訪問,バーテンービュルテンベルク州の学校訪問などを行うと共に,ノルトラインーヴェストファーレン州文科省の協力の下,改革のモデル校4校(Grundschule am Lerchenweg,Peter-Ustinov-Gesamtschule,Gustav Heinemann Schule,Hulda-pahkok-Gesamtschule)を訪問し,関係者へのインタビューおよび授業観察を行った。その結果,95年の『未来の学校』の構想が一部修正されて引き継がれており,「学びの家」(Haus des Lernen)という学校のコンセプトを基に,獲得すべき能力(コンピテンシー)を明示した主要教科のコア・カリキュラム(Kernlehrplan)の作成と,共通教養(スタンダード)を保障するための授業づくりの取り組みが現在主要には進められていることを明らかにした。特に,州が中等段階Iにおいて作成しているコア・カリキュラムは,KMK(常設文部科学大臣会議)が示した教育スタンダードを参考にしながら,各学年終了時までに獲得すべき能力(コンピテンシー)がモデルとして提示されているもので,各学校がそれに基づいて教育活動を行い,学校の独自性を発揮させることをねらうものである。現在は,主要3教科(ドイツ語,英語,数学)が既に作成されており,他教科も順次作成される予定である。このコア・カリキュラムの特徴は,身につけるべき共通教養が,能力モデルとして示されている点にある。また,各学校の授業が,子どもの個性に応じながら,コンピテンシー獲得を志向する授業づくりへと向かっており,共通教養が多様な形で保障されようとしている点も重要である。 これらは,先行研究では必ずしも十分な形で明らかにされてきておらず,今後の共通教養のあり方と教育課程の構成を考えていく上では有益な情報であると考える。
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