2008 Fiscal Year Annual Research Report
地域文化創造活動における「市民の参加」と「質の高さ」の相克〜市民オペラを中心に〜
Project/Area Number |
18730503
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
山本 珠美 Kagawa University, 生涯学習教育研究センター, 准教授 (60380200)
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Keywords | 社会教育 / 地域文化 / 市民参加 / アマチュア音楽 / 大正・昭和戦前期 / 学友会 |
Research Abstract |
最終年度である本年度は、市民参加型舞台芸術の源流を辿ることとし、(1) 大正・昭和初期に行政主体で設立された東京市・大阪市のアマチュア団体、(2) 高等教育機関(大学、高等学校、高等専門学校など)における学友会音楽部の活動、以上2点に焦点を当てて資料収集および分析を行った。 (1) については、『近代日本音楽年鑑』に掲載されている団体の中から「市民」という言葉が団体名に含まれる「東京市民合唱団」及び「大阪市民館音楽団」に着目した。東京市民合唱団は大正11年、社会局社会教育課(のちに教育局社会教育課)の立案によって設立され、山田耕筰・外山國彦らによって指導された。大正10年に設立された大阪市立市民館には当初より管弦団や合唱団が試みられたが、その後改編を経て音楽団としてクラブ活動に位置づけられた。いずれも自治体によるアマチュア音楽活動への関与の嚆矢とみられるが、これらの活動には、東京市第7代市長・後藤新平の市民自治の理念や、大阪市民館初代館長・志賀志那人のセツルメントへの意志が反映されている。 また、音楽を含むアマチュア活動の地方都市における広がりを考えるにあたっては、高等教育機関の学友会活動へ着目する必要がある。そして、大正8(1919)年に帝国議会で可決された「高等諸学校創設及拡張計画」によって、沖縄を除く全府県に少なくとも高等教育機関が一校ずつ整備されるが、文化会館・市民会館が存在しなかった当時、高等教育機関こそがそれぞれの地域の文化拠点としての役割も担っていた。高等教育機関の整備は上昇する教育欲求の充足という面から語られることが専らであるが、地域文化創造の視点に基づく分析も行われる必要があろう。
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Research Products
(1 results)