2006 Fiscal Year Annual Research Report
不登校児家族の自助グループの知識産出・受容に関する社会学的研究
Project/Area Number |
18730517
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Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
山田 哲也 宮城教育大学, 教育学部, 助教授 (10375214)
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Keywords | 不登校 / 自助グループ / 知識社会学 / ペダゴジー / 社会構築主義 / 親の会 / バーンスティン |
Research Abstract |
初年度においては、以下の三つの課題に取り組んだ。 1、教育行政における不登校の知識の再文脈化過程を探るために、1992年と2002年に文部(科学)省で開催された不登校問題関連の調査研究協力者会議の議論を比較・検討した。 その結果、専門家の知識とローカルな実践が生み出す知識が不登校言説の源である点が共通する一方で、02年会議では、臨床心理学・精神医学の知識に加えて社会学的な知識への言及が増え、「受容と共感」よりも、「診断に基づく介入」が強調されるようになったことが明らかになった。当事者の自己決定が尊重される一方で、児童虐待やAD/HD、 LDなどの「逸脱」カテゴリーを用いて判定されるケースについては、以前よりも強力な介入が志向される新たな展開を確認した。 2、上記の知見を踏まえつつ、不登校児の支援機関の種類や数の経年的な変化を整理した。支援機関は、官民両者で増加傾向にあり、近年は不登校経験者を対象とした高等学校や予備校なども登場している。教育社会学におけるトラッキングをめぐる議論を敷衍しつつ、不登校支援が脱制度化から再制度化へとその性格を変え、「不登校トラック」とでも言うべき進路が形成されつつある実態を把握した。 3、東京都と仙台市で活動している親の会への参与観察を実施した。東京都の親の会は、行政から距離を取りつつ独自に活動しているのに対し、仙台市の会は、適応指導教室と密接に連携している点に特徴がある。現在はフィールド・データを蓄積している段階で、これらを整理しつつ、組織上の性格の違いや、選択しうる支援機関の違いが、会に与える影響を検討中である。 次年度は、3を継続しつつ調査対象をさらに広げる。加えて、各会の中心メンバーや行政の担当者に対するヒアリングを実施し、その結果と1.2の知見を踏まえ、親の会の会員を対象とした質問紙調査の作成・実施を行う予定である。
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