2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18730521
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
倉石 一郎 Tokyo University of Foreign Studies, 外国語学部, 准教授 (10345316)
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Keywords | 教育学 / 社会学 / 宿題 / 住宅 / 家庭-学校関係 |
Research Abstract |
平成20年度においては、第一に前年度に引き続き、同和教育運動の中での<宿題>をめぐる議論や実践の事例を、高知県の同和地区を集中的に訪ね歩きながら資料収集および聞き取りを行った。4月・8月には室戸地方を訪ね、室戸市内に点在する同和校でかって福祉教員を経験した方々4名にお目にかかり、当時の実情をうかがった。史料などに現れることのない、戦後初期同和教育の長欠生を対象とした「寺子屋学校」的な試み、宿直室での生徒とのコミュニケーションなどの興味深い史実が明らかになった。<宿題>が、単に学校教育の補完的役割を家庭に押しつけているとするのは一面的で、福祉教員が担った実践においては、<宿題>が触媒となって、学校でも家庭でもない第三の空間作りに寄与している面が明らかになった。9月には高知市内の学校で福祉教員を経験された方3名、3月には県西部の幡多郡で福祉教員を経験された方1名から聞き取りを行い、貴重な証言を得ることができた。第二に、同和地区における住宅改良事業の展開に関する調査を、県内でもっとも住宅改善の取組が早かった高知市・小高坂地区において行い、教育の視点からの住宅問題考察に関する重要な手がかりをえることができた。 また、福祉教員の事例を相対化する必要を認識し、同じような長欠対策の教育実践でありながら、異なった制度設計のもとで教育を進めた、京都市における夜間中学の事例の予備的調査も行った。 こうした調査と並して20度には、学校での経験を「住まう」という視点から捉えることの可能性に関する理論的、経験的考察を試みた。戦後初期から高度成長末期ごろまでの日本の学校においては、宿直室に典型的に現れているように、学校は単に授業や学習活動を行うハコではなく、そこに存在する人びとによる自由な意味構築活動を許容し、生活の足場になるような空間だった。人びとはそこで多様なモノやコトを見出したり再発見し、それらとともに意味を作り出してきた。このような認識から、「住まう」という視点から学校のさまざまなモノやコト(宿題もそこに含まれる)に焦点を当てる教育叙述には、豊かな可能性があると考えられ、日本教育学会において共同報告を行った。
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