2007 Fiscal Year Annual Research Report
学校と地域の関係性の変容:インドネシアバリ州美術高校の誕生と死を描く学校誌
Project/Area Number |
18730529
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
田尻 敦子 Daito Bunka University, 文学部, 講師 (00327991)
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Keywords | インドネシア / バリ / 美術高校(SMK / SMSR) / 学校と地域 / 学校の市場化 / 二重教育システム(PSG) / 産業教育(PI) / 公教育 |
Research Abstract |
本年度は、インドネシアのバリ州において、約2ケ月間のフィールドワークを実施した。美術高校ウブドゥ校の誕生から衰退の過程を辿るために、数十人の関係者へのインタビューを行った。現在の美術高校は、地域や国家との関係性の変容のもとで、名称を何度か変えてきた。私立美術高校ラトゥナ・ワルタ・ウブドゥ校(SSRI, Ratna WartaUbud)として設立された後、国立美術高校デンパサール校(SSRI, Denpasar)の分校となった。国立美術高校がバトゥブランへ移転し廃校となった後、その校舎を利用して、地域の画家や教師達が再設立をし、私立美術高校ウブドゥ校(SMSR, Ubud)となった。 国家の教育政策の転換により、職業高校(SMK,Ubud)と名称を変え、現在は廃校の危機にある。地方分権化のもとで、職業高校のカリキュラムは弾力化され、次々と新しく設立されている。その一方で、生徒数を減らし、廃校になる高校もある。今回は、美術高校の元教員であった観光高校の校長や、普通高校に観光関連科目をプラスした学校の校長などにもインタビューを行った。さらに、バリ州教育庁や文化庁での資料も収集した。学校と地域との関係性が変容し、学校自体が市場化される時代の課題などを明らかにすることができた。学校から実践の現場へ生徒を派遣する二重教育システム(PSG:Pendidikan System Ganda)のカリキュラムは、産業の場へ生徒を派遣する産業教育(PI)と名称を変えた。職業高校では、国際的コンピテンシーを身につけるという。しかし、産業の場とされるホテルでの掃除、スパでのマッサージなどが20年後にも必要な能力なのかどうかは問われないままである。地域の次世代の若者達が公教育の場で何を学ぶべきなのか?という論議が求められている。
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Research Products
(4 results)