2008 Fiscal Year Annual Research Report
現代美術における「市民」による制作活動の教育的意義と美術科教育の今日的使命
Project/Area Number |
18730543
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Research Institution | Kyushu Women's University |
Principal Investigator |
谷口 幹也 Kyushu Women's University, 人間科学部, 講師 (30335830)
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Keywords | 現代美術 / 美術教育 / 市民 / 地域 |
Research Abstract |
○現代美術における「市民」による制作活動の教育的可能性/現代美術の作家の事例として、研究調査の対象とした宮川敬一、白川昌生、森山安英の作品、営為は、固定化された価値に揺さぶりをかけ、現在の矛盾を開示するといった共通点を持っていた。この社会、生活、思考の枠組みを問う現代美術の作品特性は、「市民」にとって、現在とは違う社会、生活、思考のフェーズを示すものである。グローバル化した世界は多くの対立を孕み、その混沌とした状況は市民生活に暗い影を落としている。人々の記憶、に着目し、消費されるモノではなく心に作用するコトをつくりだす現代美術の作品形態、また"運動体"を組織するその作品特性は、今日、越境教育学的な意味においてよりその重要性を増している。 ○参加型美術作品の構造と美術教育的効果/中学校、高等学校の美術科の教育活動においては、「社会との関わり」「批判的思考に基づく制作活動」「協働、コミュニカティブな関係性の創出」といった参加型美術作品の特性に着目する必要がある。これら参加型美術作品の特性を重視し創造的に人格を陶冶する「美術科」の教科特性の再定義することが、現在、最重要の課題であると指摘することができる。「より良く生きるための知恵」をつくりだす技法=アートを学ぶ教科として「美術」を再定義し、単元開発、授業研究を推進する必要がある。 ○アートプロジェクトと連携する学校教育の可能性/社会が危機に瀕している現在、公教育は、地域共同体を維持する砦となり、真正面から希望を語り未来を託すための営みに従事できる場所となる。そして今日、各所で行なわれているアートイベント、アートプロジェクトは、今日の社会情勢、地域社会の現実に対抗するためにはじまっている。以上のことから、多様な知と実践に出会い協働していくため場として現代美術を再認識し、市民社会への学校教諭の参画の推進、学校教諭の主体的な判断に基づく社会教育活動への参画を推進していくことが最重要であると結論づけられる。
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