2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18730556
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
山中 冴子 埼玉大学, 教育学部, 助教授 (90375593)
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Keywords | オーストラリア / ニューサウスウェールズ州 / 障害児教育 / インクルージョン / インテグレーション / インクルーシブ教育 |
Research Abstract |
オーストラリア・ニューサウスウェールズ州(以下、NSW)では、1979年のいわゆるShonellレポートにより、これまでの特殊学級やガイダンスサービスを中心とした障害児教育施策・制度の大幅な見直しが推進され、インテグレーションが主要な教育課題として位置づけられた。この背景には、障害のある子どもとその家族のみを対象としたガイダンスサービスや、分離を原則とする特殊学級のあり方が、障害児生徒に負のレッテルをはるものとして疑問視されたことが少なからず影響している。 1980年代には同州のインテグレーション実現に向けた施策が多々出され、フルタイムの通常学級籍を障害児生徒に認めることや、障害児生徒を受け入れる学校サイドは保護者の要望を出来る限り尊重することなどが明記された。あわせて、学習困難児・生徒の存在と彼らに対する支援のあり方が、教育行政的課題の一つとして認識されるようになっていった。 1990年代には、インテグレーションとともにインクルージョンという言葉が併用されるようになる。しかし、これらの言葉の相違は必ずしも明確ではなく、インクルージョンという言葉の登場は特定の政策文書に限られた。1996年のいわゆるMcRaeレポートでは、インテグレーション・インクルージョンの実現に向けて法令・政策から教員養成、教育実践に至るまで、あらゆるレベルで障害児教育のあり方の見直しを提言した。しかし、ユネスコのサラマンカ声明にもとづいたInclusion Nationalによるレポート(2001年)は、NSWのインクルージョン度を障害児者やその関係者の声からDランクと評価している。 平成18年度は、NSWのインクルーシブ教育の関連施策の収集・整理を行った。次年度はそれらを分析し、同州の施策においてインテグレーション・インクルージョンがどう解釈されたのかを追究する予定である。
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