2006 Fiscal Year Annual Research Report
戦後のソ連社会とソヴィエト愛国主義の成立:「ユダヤ人問題」を切り口に
Project/Area Number |
18739001
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Research Category |
Grant-in-Aid for Special Purposes
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
長尾 広視 北海道大学, スラブ研究センター, 学術研究員 (70431351)
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Keywords | 政治学 / 西洋史 / 民族学 |
Research Abstract |
平成18年度のおもな研究活動としては、研究計画中で予定していた国外調査旅行を延期し、そこで予定していた在外資料調査に代えて、米国国務省ソ連関係文書(1949〜1955年)のマイクロフィルム・コレクションを購入して、米国の外交関係者の目に映った当時のソ連の社会・政治状況と、そのなかでの愛国主義、ロシア国粋主義、反ユダヤ感情などについての認識・評価の検証を行なった(現在も作業中)。この作業は、平成19年度に予定している、第二次世界大戦期から戦後にかけてのソ連の社会意識とソ連指導部の愛国主義涵養政策、および対ユダヤ人政策をテーマとする学会報告に向けての準備を兼ねている。 研究成果の発表として、2006年10月28日に開催されたロシア史研究会大会(於明治大学)で、自由論題「スターリン晩年の民族カードル養成政策-『ユダヤ人制限措置』との関連から」の報告を行なった。この報告は、加筆修正を行なったあと、雑誌『ロシア史研究』に投稿する予定である。 また年度末になって、雑誌『思想』(岩波書店)に「『コスモポリタン批判』再考-ソ連演劇界にみるスターリン統治の論理-」を発表することができた。この論文は「コスモポリタン批判」という現象を、反ユダヤ主義政策という文脈や愛国主義二排外運動の一形態としての既存の位置づけから一旦切り離すことによって、戦後ソ連社会の国家的動員政策とそれを支えていた条件、その中での社会層の利害対立の様相を解き明かす材料とすることを狙ったものである。 他方、研究計画中に予定していた新規論文の執筆(戦後の『文学新聞』における愛国主義キャンペーンとソ連知識人の役割に関するもの)については作業が遅れており、本年度中頃までの完成を目指す予定である。
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Research Products
(1 results)