Research Abstract |
p進解析および関数体の付値を用いて展開されるMahler関数の理論から得られた著しい成果のひとつとして,相異なるすべての代数点を例外なく代数的独立な値に写像する解析関数を構成できることが知られている。これは応用上も重要な関数である。しかしながら,従来知られていたそのような性質を有する関数は1変数関数であり,多変数関数の実例は至って人為的なものしか構成できていなかった。研究代表者は,多方面への応用が知られているq-seriesの代表的なものであるq-超幾何関数に類似した3変数の解析関数Θ(x,a,q)が次に述べる性質をもつことを,p進数体Q_p上のMahler関数の理論を応用して証明した。即ち,Θ(x,a,q)は相異なるすべての代数点(x,a,q)を例外なく代数的独立な値に写像し,更に,2変数関数Θ(a,a,q)は非正則な連分数として表示できる。しかも,Θ(x,a,q)は線形回帰数列により生成され,最も簡単な実例はフィボナッチ数列を用いて構成できる。従って,Θ(x,a,q)は最も簡単な場合でさえ,q-超幾何関数のFibonacci analogue とみなすことができ,種々の応用例を有することが期待される。また,この結果の証明で用いる補助関数は従来の研究で扱われていたものより複雑な形をしたMahler関数であり,それらが関数体上で代数的従属となる必要十分条件を,Θ(x,a,q)を生成する線形回帰数列がみたす条件として記述することがキーポイントである。その際に用いたKubotaによるMahler関数の関数体上での代数的独立性判定定理については,これまで1変数の場合についてのみ有効な応用例が知られていた。今回得た結果はKubotaの定理を多変数Mahler関数に有効に応用した初めての例であり,この点は重要である。
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