Research Abstract |
本年度は,以下の研究を行なった. 1.空間グラフの辺ホモ上ピー及び頂点ホモトピーとは,John Milnor氏による絡み目のリンクホモトピーの一般化として谷山公規氏により導入された同値関係である.絡み数が0である2成分絡み目成分のSato-Levine不変量を応用した空間グラフの辺(頂点)ホモトピー不変量がThomas Fleming氏及び研究代表者によって定義され,ある2成分グラフにおいで,絡み目成分が全てリンクホモトピーの下で自明であるが,それ自身は辺(頂点)ホモトピーで非分離な空間埋め込みが辺(頂点)ホモトピーの下で無限個存在することが示されていた.そこで新たに,絡み数が0とは限らない2成分絡み月成分の一般化されたSato-Levine不変量を応用した空間グラフの辺(頂点)ホモトピー不変量を構成し,ある2成分グラフにおいて,リンクホモトピーの下で同じ絡み目成分(これらは自明とは限らない)を持つ空間埋め込みが辺(頂点)ホモトピーの下で無限個存在することを示した.これらの結果は,空間グラフの辺(頂点)ホモトピーが,絡み目のリンクホモトピーと比較してその様相が著しく異なっていることを示している. 2.高々3交点の正則射影図上に写る絡み目は,Hopf絡み目も三葉結び目も含まなければ自明である.そこでYoungsik Huh氏との共同研究により,この事実を一般の空間グラフに拡張し,高々3交点の正則射影図上に写る空間グラフは.Hopf絡み目も三葉結び目も含まなければ,その空間グラフは全自由,即ち,任意の部分空間グラフの3次元球面における補空間の基本群が自由であることを示した.特に,高々3交点の正則射影図上に写る平面的グラフの空間埋め込みは,Hopf絡み目も三葉結び目も含まなければ自明である.系として,極小非自明な空間グラフ(=それ自身は非自明だが,その任意の真部分空間グラフは自明である空間グラフ)の正則射影図の交点数は,Hopf絡み目と三葉結び目を除けば4以上であるという,空間グラフ理論においてに非常に基本的と思われるが示された.一方,平面的グラフの正則射影は,そのグラフのいかなる自明空間埋め込みもその射影図上に写らないとき非自明であると呼ばれるが,同じくHuh氏との共同研究により,非自明な正則射影図の交点数は3以上であることを示した.特に交点数がちょうど3の非自明な正則射影図上に写る空間グラフは,前述の結果により必ずHopf絡み目かもしくは三葉結び目を含む.これは小沢誠氏による「非自明な正則射影図上に写る空間グラフは,必ず非自明な真部分空間グラフを含むか?」という問題に対する部分的な肯定的解答である.
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