2006 Fiscal Year Annual Research Report
積分変換の大域理論による高階分散型方程式の解の特異性伝播
Project/Area Number |
18740073
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
多久和 英樹 大阪大学, 理学研究科, 特任研究員 (80403111)
|
Keywords | 積分変換 / 解の特異性 / FBI変換 / 複素幾何光学解 |
Research Abstract |
まず、分散型方程式を研究する準備として、熱方程式の解の特異性をFBI変換を用いて考察した。この研究でユークリッド空間の場合には、熱方程式の解の平滑効果を肯定的に証明できた。FBI変換、とりわけ複素相関数を持つ陪特性曲線に沿った大域的漸近解を用いたこの証明は新しい。また熱方程式を考察する場合、考える特性曲線が複素領域に入り込んでくるので、ユークリッド空間での経験からすると、研究課題である多様体上での分散型方程式の解の特異性を調べるのにも多くの情報を与えると思われる。この結果の発表はしてあるが、まず執筆中の研究報告集で、次に学術綸分として投稿を予定している。 散乱計量によって定義される多様体上での考察は、現在進行中でありまだまとまった結果は出ていないが、最近双曲空間や漸近的にユークリッド空間に近い多様体上での磯崎氏の散乱理論が発表されたとこであるので、その理論との比較検討が先ず2年目の課題になるといえる。 次に、積分変換に現れる複素相関数を考察する中で近年複素幾何光学解と呼ばれる特殊解が注目されている。この解は偏微分方程式の係数決定問題等の逆問題に応用を持つが、最近FBI変換の専門家であるSjostrand氏等が新しい特殊解を考察した。この解の重要性は次第に明らかになってきたが、従来この種の解は、主要部が定数係数のラプラシアン以外には構成できていなかった。「海外旅費」による今回のFrance滞在中から始まった、Zuily氏との研究交流の中で、楕円型とは限らない2階定数係数作用素に対して同様のlimiting Carleman weightと呼ばれる相関数を構成できたことは、最初に予想していないことであった。 逆問題などへの応用が期待は出来るが、現時点では成功していない。今後2年の研究課題となるが、逆問題の専門家との交流を持って実現したい。
|