2006 Fiscal Year Annual Research Report
相互拡散項を伴うロトカ・ボルテラ系の解構造に対する研究
Project/Area Number |
18740093
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Research Institution | Fukuoka Institute of Technology |
Principal Investigator |
久藤 衡介 福岡工業大学, 工学部, 講師 (40386602)
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Keywords | 相互拡散(cross-diffusion) / ロトカ・ボルテラ系 / 楕円型偏微分方程式 / 共存定常解 / 分岐 / 重定-川崎-寺本モデル / 空間非一様性 |
Research Abstract |
平成18年度においては、数理生態学の代表的なモデルのひとつである「ロトカ・ボルテラ系」において、相互拡散項(cross-diffusion)が共存定常解の大域構造に及ぼす非線形効果を研究した。特に、被食生物と捕食生物の個体数密度の時空的変化を記述するロトカ・ボルテラ系で、被食生物の空間的拡散が捕食生物の個体数が多い状況ほど鈍化するような相互拡散項(分数型相互拡散)を伴うケースに注目した。前年度までに、私と門田智仁氏(早稲田大学大学院・当時)の共同研究で得られていた「共存定常解集合のなす大域的分岐枝」の形状を更に精緻に解析した。具体的成果として、分数型相互拡散の増大効果によって分岐枝が曲がり、共存定常解は本質的に2種類に分類されることを証明した。この結果は、偏微分方程式分野の国際的な学術雑誌「Advances in Differential Equations」の2007年2月号に掲載された。 また、異なる生物種の相互作用に地域格差があるのは自然な状況だが、私は平成18年度より、相互拡散(cross-diffusion)や捕食等の相互作用(interaction)の地域格差が、共存定常解のなす大域分岐構造にもたらす非線形効果の数理的抽出に着手した。平成18年度の研究成果として、捕食生物が捕食しやすい地域と被食生物が逃げやすい地域が互いに隔離されると、共存定常解のなす分岐枝が曲がり、捕食生物は比較的高い死亡率にあっても生存可能であることが示唆された。上記の解析においては、本課題の科学研究費補助金で購入した数式処理ソフト「Mathematica」を援用している。得られた研究成果は、平成18年度の日本数学会秋季総合分科会(関数方程式分科会)や日本数理生物学会大会において講演発表するとともに、非線形解析学の国際的な学術雑誌に投稿中である。
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