2007 Fiscal Year Annual Research Report
相互拡散項を伴うロトカ・ボルテラ系の解構造に対する研究
Project/Area Number |
18740093
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Research Institution | Fukuoka Institute of Technology |
Principal Investigator |
久藤 衡介 Fukuoka Institute of Technology, 工学部, 准教授 (40386602)
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Keywords | 相互拡散(cross-diffusion) / ロトカ・ボルテラ系 / 楕円型偏微分方程式 / 共存定常解 / 分岐 / 重定-川崎-寺本モデル / 空間非一様性 / 安定性 |
Research Abstract |
平成19年度においては、食う食われるの関係にある2種の生物の個体数変化を記述する数理モデルである「ロトカ・ボルテラ系」の研究に従事した。具体的には、相互拡散(cross-diffusion)や捕食等の相互作用(interaction)の地域格差が、ロトカ・ボルテラ系の共存定常解の分岐構造にもたらす非線形効果の抽出を行った。本課題の平成18年度における研究成果で、捕食生物が捕食しやすい地域と被食生物が逃げやすい地域が互いに隔離されると、共存定常解のなす分岐枝が釣り針状に曲がり、捕食生物は比較的高い死亡率にあっても生存可能であることが判明していた。平成19年度においては、上記の釣り針型の分岐枝上の共存定常解に対して安定性解析を行った。その結果、捕食生物のダイナミクスが被食生物のそれよりも遥かに速い場合は、釣り針型分岐枝上の全ての共存定常解の安定性が決定された。一方で、捕食生物のダイナミクスが被食生物のそれよりも遥かに遅い場合は、釣り針型分岐枝から時間周期解がホップ分岐することが証明された。これらの研究成果は、平成19年度の日本数学会秋季総合分科会(関数方程式分科会)において講演発表するとともに、非線形解析学の国際的な学術雑誌に投稿中である。また、ロトカ・ボルテラ系において、被食生物の空間的拡散が捕食生物の個体数が多い状況ほど鈍化するような相互拡散項(分数型相互拡散)を伴うモデルも研究した。本課題の平成18年度の研究において、捕食生物の増殖率が大きいケースにおいて、分数型相互拡散の増大効果によって分岐枝が曲がり、共存定常解は本質的に2種類に分類されることが判明していた。平成19年度においては、上記の分類が捕食生物の増殖率が小さいケースでも有効であることを証明した。この結果も国際的な学術雑誌に投稿中である。
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