2008 Fiscal Year Annual Research Report
相互拡散項を伴うロトカ・ボルテラ系の解構造に対する研究
Project/Area Number |
18740093
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Research Institution | Fukuoka Institute of Technology |
Principal Investigator |
久藤 衡介 Fukuoka Institute of Technology, 工学部, 准教授 (40386602)
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Keywords | 相互拡散(cross-diffusion) / ロトカ・ボルテラ系 / 楕円型偏微分方程式 / 共存定常解 / 分岐 / 分数型非線形拡散 / 空間非一様性 / 安定性 |
Research Abstract |
平成20年度においては、数理生物学モデルに現れる反応拡散方程式系(ロトカ・ボルテラ系)に対して、とかく相互拡散(cross-diffusion)が方程式系の定常解構造にもたらす非線形効果の抽出を念頭に研究を進めた。食う食われるの関係にある2種の生物が棲息する生態系では、例えば「餌が多い地域ほど捕食生物の空間的拡散が鈍化する」状況も自然である。このような拡散を伴う場合、生物種の個体数がなす時空的ダイナミクスは「分数型の相互拡散」でモデル化される。平成20年度の特筆すべき研究成果は、分数型の相互拡散を伴うロトカ・ボルテラ系の共存定常解の詳細な分岐構造が得られたことである。具体的には、まず、共存定常解の高さ(最大値ノルム)は、相互拡散には依存しない正数で抑えられることを証明した。次に、その最大値ノルムに対する先験的評価を利用して、共存定常解の集合がなす分岐枝を追跡した。特に、分数型の相互拡散が大きいケースにおいては、分岐枝の詳しい形状が得られた。また、同じ餌を取り合う競合種の関係にある生物の個体数変化を記述するモデル(SKTモデル)においても、相互拡散と共存定常解の関係を研究した。平成20年度の研究成果として、ディレクレ境界条件の下では相互拡散が増大すると、共存定常解は減衰することが証明できた。より詳しく、その減衰は「速い減衰」と「遅い減衰」の2種類が存在し、相互拡散が増大したときに共存定常解がどちらの減衰に従うかは、競合や増殖率の大きさによたて決まることが判明した。なお、上記の研究成果の一部は、平成20年度日本数学会総合分科会(関数方程式分科会)の一般講演にて発表するとともに、微分方程式に関する国際的な学術誌「Differential and Integral Equations」に投稿し、査読を経て掲載が決定している。
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