2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18740105
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松本 浩典 京都大学, 大学院理学研究科, 助手 (90311365)
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Keywords | X線天文学 / 天の川銀河中心 / スターバースト銀河 / 宇宙化学進化 / 宇宙線 / 暗黒加速器 |
Research Abstract |
重元素合成史を明らかにするには、現在重元素を盛んに生み出している若い銀河と、現在の重元素生成率はそれほど大きくないやや年取った銀河を比較するのが得策である。今年度我々は、前者の例としてM82銀河を、後者の例として天の川銀河(我々の住む銀河)の中心領域を研究対象として選び、日本のX線天文衛星「すざく」で観測を行った。M82銀河からは、銀河から約3万5千光年離れた場所に温度600万度程度の高温ガスの塊が存在することを発見した。高温ガスに含まれる重元素が出す特性X線を用いて鉄・硫黄・珪素・マグネシウム・ネオン・酸素などの重元素組成比を調べたところ、太陽質量の10倍以上の重い星が超新星爆発を起こした際に作られる組成比と良く似ていることがわかった。大質量星は、銀河が誕生直後に爆発を起こす。我々の発見は、M82銀河が誕生直後に銀河内で生成された重元素が、約1500万年かけて現在の場所に移動してきたことを示す。これにより、重元素は銀河で生成され、宇宙空間に拡散している確かな証拠をつかむことが出来た。天の川銀河中心に関しては、広い領域から非常に強い鉄の特性X線を検出した。特に高階電離(ヘリウム状)鉄の輝線を詳細に解析し、その起源は温度約1億度の高温ガスであることをつきとめた。これほど高温のガスが充満する事実は、銀河中心領域は過去に非常に活動的だったことを示し、例えば大量の超新星爆発が発生したのかもしれない。事実、珪素の輝線を利用した撮像観測で、超新星爆発の名残(超新星残骸)と考えられる温度数千万度の高温ガスの塊を多数発見した。この爆発で生み出された重元素が拡散していく様子を明らかにすることは今後の課題である。また銀河中心領域で明るく輝くTeVγ線天体の観測も行った。既知のTeVγ線天体はX線でも明るいものばかりであったが、我々が観測した天体はX線では非常に暗いことを明らかにした。また、他の波長でも対応天体はない。これらγ線でのみ明るい天体は、「暗黒天体加速器」と呼ばれ、高エネルギー陽子でγ線を放射している可能性が示唆されている。宇宙線の故郷の候補として、現在非常に大きな注目を集めている。
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Research Products
(6 results)