2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18740105
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松本 浩典 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 助教 (90311365)
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Keywords | X線天文学 / 天の川銀河中心 / 宇宙線 / 銀河団 / 宇宙化学進化 |
Research Abstract |
我々の銀河(天の川銀河)の中心領域は、温度約一億度の高温ガスで満たされている。この高温ガスの性質を解明するため、我々は今年度銀河中心領域のサーベイ観測をすざく衛星を用いて行った。その過程でTeVガンマ線天体HESSJ1616-518の観測を行った。この天体はTeVガンマ線で明るいにも関わらず、他の波長ではまだ対応天体が発見されていない。すざくの低バックグラウンド、高感度のおかげで、我々は初めてHESSJ1616のX線対応天体を発見することができた。その結果、この天体はTeVガンマ線に比べてX線光度が一桁以上小さいことがわかった。この事実は、TeVガンマ線の起源が高エネルギー電子ではなく、高エネルギー陽子であることを示唆する。いまだ起源が明らかでない宇宙線の起源の候補として、注目を集めつつある。次に、銀河団での重元素合成を調べるべく、A399,A401という合体しつつある二つの銀河団のX線観測をすざく衛星を用いて行った。その結果、高温ガスは銀河団の中心から500万光年まで広がっていることがわかった。これは従来考えられていたよりもはるかに広範囲に広がっていることを意味する。しかもその高温ガスには大量の鉄元素が含まれていることがわかった。これほど遠くまで重元素を大量にばらまくには、少なくとも100億年前には銀河内で重元素が合成され、銀河間空間へと放出されていなければならない。100億年もの昔に、銀河から大量の重元素が遠くまで飛ばされているという観測証拠はいままでなく、我々はX線観測で初めてその証拠をつかむことができたといえる。
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