2006 Fiscal Year Annual Research Report
銀河・銀河団の多波長データに基づいた遠方宇宙の探究
Project/Area Number |
18740112
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
北山 哲 東邦大学, 理学部, 助教授 (00339201)
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Keywords | 天文 / 宇宙物理 / 銀河 / 銀河団 / X線 / 赤外線 / 電波 |
Research Abstract |
平成18年度は、多波長における観測データを用いた銀河・銀河団進化およびその宇宙論的意義についての研究を進めるとともに、得られた成果を順次論文として公表した。まず、約80個の遠方銀河団について、X線衛星ASCAとROSATによる観測データを用いて、銀河団進化の良い指標として知られているX線光度-温度の相関関係について詳細に調べた。その結果、銀河団中心部を除いた外層部からのX線光度とガス温度の間には、分散が小さい相関関係が成立するものの、その相関関係は単純な銀河団進化の理論モデルの予想とは大きく矛盾することが明らかになった。この事実は、従来から問題視されてきた銀河団中心部のみならず、外層部まで含めた銀河団全体の進化についての理解に大きな欠陥が存在していることを示唆しており、今後の更なる研究の必要性を提起している。 また、X線観測による銀河団質量の測定には、ガス温度の非一様性に起因する系統誤差が内在することが近年指摘されているが、この系統誤差が、銀河団を用いた宇宙論パラメータの測定にどのように影響するのかを考察した。その結果、従来報告されている初期密度ゆらぎの振幅(σ_8)の測定値は、15%程度系統的に過小評価されている可能性が高いことが明らかになった。 さらに、次世代大型観測機器ALMAによる電波領域における銀河団観測のシミュレーションコードの開発を進めた。これまでに、シミュレーションコードの大枠が完成したが、銀河団ガスの広がった放射成分と、電波銀河などの点源成分をいかに効率良く分離するかなどについて技術的な課題が残されており、現在考察を進めている段階である。 これらに加え、赤外線衛星Spitzerによる7つの楕円銀河の観測結果も新たに公表した。この観測の結果、楕円銀河内におけるダスト放射の空間分布が明らかになるとともに、楕円銀河に付随する高温プラズマとダスト粒子が相互作用している兆候が得られた。
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