2007 Fiscal Year Annual Research Report
銀河・銀河団の多波長データに基づいた遠方宇宙の探究
Project/Area Number |
18740112
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
北山 哲 Toho University, 理学部, 准教授 (00339201)
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Keywords | 天文学 / 宇宙物理学 / 銀河 / 銀河団 / 電波 / X線 / 可視光 |
Research Abstract |
平成19年度は、遠方銀河団の多波長観測を用いた銀河間高温ガスについての研究、および原始銀河の形成と観測可能性についての研究を行った。まず前者に関しては、日米欧が協力してチリに建設中のアタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(ALMA)による銀河団観測のシミュレーションコードの開発を進め、銀河団ガスの広がった放射成分と、電波銀河などの点源成分を効率良く分離できるアルゴリズムを考案した。これにより、将来ALMAが完成した際に想定される観測条件をより忠実に取り入れて、銀河団ガスの観測可能性を評価することが可能となった。 また従来、電波とX線における銀河団観測の組み合わせによって測定されたハッブル定数(あるいは銀河団までの距離)の値は、他の方法による結果と比べて系統的に15%程度ずれる傾向があったが、その理由は長らく不明であった。今回この系統誤差が、高温ガスの温度非一様性の影響によってごく自然に説明されることを初めて指摘した。また、その過程で銀河団形成の大規模数値実験のデータを精査したところ、ガス密度・温度の局所的非一様性が近似的に対数正規分布に従うことを新たに発見した。 一方、後者の原始銀河の形成に関しては、輻射輸送を取り入れた流体シミュレーションにより、原始銀河内に生成した電離領域の進化を詳細に調べた。この結果、原始銀河内に初めて形成された第1世代星からの輻射によって一時的に電離したガスでは、冷媒となる分子の形成がむしろ促進されるため、次に誕生する第2世代星の質量は第1世代星よりも小さくなる可能性が高いことが明らかになった。 更に、すばる望遠鏡を用いた可視光観測により、原始銀河の有力候補であるLyα emittersがクエーサーの近傍で著しく減少している領域を発見した。これは、クエーサーからの強い輻射の影響によって、周囲の銀河形成が実際に阻害されている現場を捉えたのではないかと考えられる。
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