2008 Fiscal Year Annual Research Report
銀河・銀河団の多波長データに基づいた遠方宇宙の探究
Project/Area Number |
18740112
|
Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
北山 哲 Toho University, 理学部, 准教授 (00339201)
|
Keywords | 天文学 / 宇宙物理学 / 銀河 / 銀河団 / 電波 / 赤外線 / X線 |
Research Abstract |
平成20年度は、かねてより国内外の観測装置に対して観測提案を行い、取得されていた銀河・銀河団データに対する解析と考察を重点的に進め、その成果を順次論文として出版した。特に、かみのけ座銀河団からの広がったダスト放射に対しては、米国の赤外線衛星Spitzerを用いた観測の結果、従来で最も厳しい制限を得ることに成功し、50年以上に渡り続いてきた論争に一定の決着をつけたばかりでなく、このような広がったダスト放射の影響がミリ波サブミリ波帯での銀河団観測においては無視できることを明らかにした。また、遠方銀河団RXJ1347.5-1145に温度3億度の宇宙で最も高温のガス塊が存在することは、研究代表者らによるミリ波帯観測データの解析によって以前から指摘されていたが、今回その発見を日本のX線衛星Suzakuを用いた硬X線観測によって更に確証することにも成功した。この成果は、大型ミリ波サブミリ波干渉計ALMAをはじめとする次世代観測機器による銀河団観測が、銀河団プラズマの極めて強力な観測手段となることを改めて裏づけたものと言える。これらの成果を踏まえつつ、ALMAによる銀河団観測のシミュレーションコードの開発も更に進めた。この結果、銀河団による広がった放射成分と電波銀河などの点源成分のデータを分離する際に、実際の観測時に想定されるポインティング誤差が大きな障害となり得ることが判明したので、それを除去するための方法について様々な角度から検討を進めた。一方、原始銀河の形成過程を調べるための輻射流体シミュレーションの拡張も行い、水素に加えてヘリウムと重水素を含めた非平衡化学反応と加熱・冷却過程を組み入れたコードを完成させた。
|