2006 Fiscal Year Annual Research Report
太陽近傍とは異なった環境下での星形成過程の理論的研究
Project/Area Number |
18740117
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
大向 一行 国立天文台, 理論研究部, 上級研究員 (70390622)
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Keywords | 星形成 / 宇宙論 / 宇宙初代星 / 金属欠乏星 |
Research Abstract |
現在の星には炭素以上の重元素が豊富に(質量にして2%ほど)存在するのであるが、これらの重元素は宇宙の歴史を通じて、星の中で徐々に合成されてきたものである。それゆえ、宇宙最初の星の形成の際には重元素が全くなく、それ以後の星の形成の場合にも、銀河形成期には重元素量が非常に少なかったものと考えられている。そこで、本年度の研究では、このように重元素が少ない環境での星形成過程を調べた。 まず重元素を含まない始原ガスからの星形成過程を宇宙論的な初期条件から始めて、化学・輻射といった素過程を詳細に取り扱いながら3次元流体計算を行うことにより宇宙最初の星のもととなる高密度コアの収縮過程を調べた。これは、この種の計算例の中では、これまででもっとも高密度まで進化を追ったものである。次に始原ガスからの星の形成の際に、どのくらいの大きさの磁場が存在すると、原始星ジェットを引き起こすのか、その値を定量的に示した。 微量の重元素がある場合の星形成に関しても研究を行った。星形成を行う高密度コアが収縮する際の温度進化は、多様な流体現象の原因となり重要である。これまでの低重元素量ガスの熱進化の解析では、星間ダストの性質として、現在の星間媒質中のもの(AGB星起源)と同じものを仮定してきたが、宇宙初期では超新星起源のダストが主となるため、よくない仮定である。そこで、我々は宇宙初代星の超新星から形成されたダストのモデルを用いて、そのようなダストを含む気体の熱進化を調べた。その結果、AGB星起源のダストよりも少量でも輻射冷却、分子形成といった過程に重要となることがわかった。さらにダストによる冷却が起こる際に、高密度コアが分裂する条件に関しても流体計算を行うことで調べた。これにより、わずか(太陽の10万分の1程度)な重元素量でも、その多くがダストに凝縮している場合には低質量星形成が可能であることが見出された。
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Research Products
(4 results)