2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18740132
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
樽家 篤史 東京大学, 大学院理学系研究科, 助手 (40334239)
|
Keywords | 宇宙科学 / 重力波 / 宇宙物理 / データ解析 |
Research Abstract |
背景重力波を用いた宇宙論研究において、波源の特定と起源の同定は特に重要な問題である。初年度の研究では、銀河系近傍の天体から放射された重力波の非等方性について着目、背景重力波の非等方分布をレーザー干渉計のデータから直接求める方法について考察し、背景重力波の起源が近傍由来か遠方由来か(宇宙論的起源)を区別する方法論について研究した。重力波に対するレーザー干渉計の応答は、シグナルの取得方法、および重力波の偏極に由来して、一般に指向性を持つ。そのため、強度分布が非等方な場合、干渉計の固有運動(地上なら地球の自転に伴う回転、スペースなら干渉計自体の軌道運動)によって、シグナルに長周期的な時間変動が生じる。こうした長周期変動の解析から、背景重力波の2次元強度マップを再構築することができる。このような原理に基づき、本年度の研究では、背景重力波の2次元非等方マップを数値的に再構築するアルゴリズムを開発、NASA・ESAの共同プロジェクトとして打上予定のLISA(Laser Interferometer Space Antenna)を念頭においたデモンストレーションを行い、アルゴリズムのチェックと方法論の有効性について検討した。 また、背景重力波を検出するという観点から、実用上考慮すべき問題についても考察した。背景重力波のシグナルは統計的にランダムで、一見すると検出器の雑音と見分けがつかない。そのため、2台の独立な干渉計から得られるシグナルを用いて相関解析を行うことで、背景重力波の検出が可能となる。このような統計解析では、検出器雑音と重力波シグナルがガウス分布に従う場合、最適な統計指標が知られており("standard cross-correlation statistic(SCC)"と呼ばれる)、現在、データ解析でも標準的に使われている。しかしながら、現実問題として検出器雑音の非ガウス性などを考慮する必要があり、効率のよい検出方法の開発と工夫が望まれている。そこで本年度は、非ガウス雑音にも比較的強いといわれる統計指標("generalized cross-correlation statistic(GCC)"と呼ばれる)について着目し、その有効性について考察した。特に、あるクラスの非ガウス雑音の場合にGCCの検出能力を解析的に求め、SCCとの違いを定量化した。その結果、GCCは、分布の裾が広がった非ガウス雑音に対して特に有効で、その検出能力は分布の裾に依らず一定になることがわかった。GCCはデータ解析への実装が比較的容易な統計指標であり、本研究成果を基に、実データでの具体的応用を今後考えていきたい。
|