2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18740132
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
樽家 篤史 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 助教 (40334239)
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Keywords | 一般相対論 / 背景重力波 / 宇宙物理 / 宇宙論 / 統計解析 |
Research Abstract |
本年度は、背景重力波のもつ多様な統計的性質を考慮し、その特徴を引き出すための統計解析手法に関する研究を進めた。具体的には、データ解析において通常仮定されている背景重力波の無偏極性を検証するため、複数台のレーザー干渉計を組み合わせて背景重力波の偏極成分(無偏極・円偏極)を分離・検出する解析手法を考案した。この手法をもとに、将来的に背景重力波の円偏極成分がどれだけ制限できるか、次世代干渉計5台からなるネットワークを想定して、定量的な見積もりを行った。その結果、無偏極性を仮定した従来の解析手法に匹敵する観測的制限が、円偏極成分に対しても得られることが明らかになった。背景重力波の円偏極成分は、宇宙論的なパリティ対称性の破れに起因してその存在が期待されており、今回開発したデータ解析手法を用いることで、宇宙初期に起こったパリティ対称性の破れをプローブすることができる。この解析手法は既存の干渉計にも適用できるため、現在、現存するデータを用いて円偏極成分に対する観測的制限を得るための模索も進めている 円偏極成分の検出は干渉計を用いた直接的な検出だけでなく、電磁波観測による宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の非等方性観測からでも検出が可能である。本年度の研究ではさらに、CMBの非等方性観測から将来的にどれだけ円偏極成分を制限できるか、定量的な見積もりを進めた。CMB観測を用いると、現在の宇宙の地平線サイズに匹敵する超長波長の背景重力波を検出することが可能である。しかるに、CMBの非等方性には重力波以外に、密度ゆらぎに由来する成分が本来混じっており、そのせいで地上の干渉計ほど重力波の円偏極成分に対して強い制限が得られないことがわかった。それでも、背景重力波の振幅が密度ゆらぎと比べて10パーセント程度の大きさなら、ある程度小さい円偏極でも検出が可能であることがわかった。
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