2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18740132
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
樽家 篤史 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 助教 (40334239)
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Keywords | 一般相対論 / 背景重力波 / 宇宙物理 / 宇宙論 / 統計解析 |
Research Abstract |
計画最終年に相当する平成20年度は、これまで行ってきた研究をさらに発展させる目的で、背景重力波の多様な性質を引き出す様々な手法の開発を行った。具体的には、(1)円偏極した背景車力波の検出、(2)テンソル成分以外の偏極自由度を持つ背景重力波の検出について、地上のレーザー干渉計を中心に、将来的な検出可能性について定量的な検出可能性を議論した。このうち、(1)のテーマは前年度から研究を行っていたものだが、本年度は、複数台の干渉計を用いた場合に円偏極検出の最適な分離・検出法を発見し、次世代干渉計を5台使うと検出感度が2倍程度改善することを明らかにした。一方(2)では、重力波が一般相対論で予言されている以外偏極成分(スカラー、ベクトル成分)を持つ可能性について、干渉計を用いて実験的に検証する手段を考案、次世代干渉計を用いた場合、どの程度の感度が出るか、定量的な見積をもり行った。その結果、3台以上の干渉計を組み合わせることで、テンソル成分以外の偏極を分離・検出できることを示し、検出感度もテンソル成分と匹敵するものが得られることがわかった。 背景重力波の円偏極成分は、宇宙論的なパリティ対称性の破れに起因して現れるもので、今回開発したデータ解析手法を用いることで、宇宙初期に起こったパリティ対称性の破れをプローブすることができる。また、テンソル成分以外の偏極成分は、一般相対論が何らかの変更を受ける場合に一般に現れるものである。重力理論の検証という観点からみても、今回行った研究はきわめて意義深く、将来的に、重力波を観測手段とする宇宙論研究を推進する上で、重要な基盤になると思われる。
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