2006 Fiscal Year Annual Research Report
高温高密度における強い相互作用の相転移の非平衡過程に関する研究
Project/Area Number |
18740140
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
根本 幸雄 名古屋大学, 大学院理学研究科, 研究員 (30377949)
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Keywords | ハドロン物理 / カイラル相転移 / 非平衡過程 |
Research Abstract |
1前年度の研究において、カイラル相転移温度付近の零質量クォークスペクトルは、カイラル秩序変数揺らぎとの相互作用によって低運動量部に三つのピーク構造を持つことを明らかにした。このようなピーク構造が有限温度系においてどのような機構によって現れるかを、より一般的に示すために、零質量ディラックフェルミオンが有限質量ボソンと湯川結合している模型を用いて、フェルミオンスベクトルの温度依存性等を調べた。その結果、温度がボソンの質量と同程度になる場合には一般的に三ピーク構造を形成することピーク形成はフェルミオンのランダウ減衰に起因し、ピークの数はボソンに質量があることが本質的に重要であることを明らかにした。 2有限質量クォークの場合に現れる、一次のカイラル相転移が終わる点のまわりでは、二次相転移に伴う秩序変数揺らぎが存在すると考えられる。この揺らぎが重イオン衝突等で観測されるレプトン対生成にどのような影響を与え得るかを調べるため、光子と揺らぎとが結合する過程を通じてクォーク対がレプトン対に崩壊する過程の一つを見積もった。この過程はローレンツ対称性を破る頂点を含んでおり、有限密度においてもその効果によってレプトン対生成に大きな抑制効果をもたらすことがわかった。現在はさらに別の効果を取り入れて研究をすすめている。 3ゲージ理論に基づくカイラル相転移近傍のクォークスペクトルの研究を行うため、シュインガーダイソン方程式を用いた解析を行った。1グルーオン交換に基づくダイアグラムを基本にし、無限次のダイアグラムの足し上げによってカイラル相転移を実現させている。結果として、強結合領域ではグルーオンとの相互作用により大きな減衰効果を持つこと熱質量の結合定数依存性が、弱結合の場合と異なりほぼ一定になること、等がわかった。現在論文作成中である。
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