2007 Fiscal Year Annual Research Report
高温高密度における強い相互作用の相転移の非平衡過程に関する研究
Project/Area Number |
18740140
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
根本 幸雄 Nagoya University, 大学院・理学研究科, 研究員 (30377949)
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Keywords | ハドロン物理 / クォークグルーオンプラズマ / カイラル相転移 |
Research Abstract |
1ゲージ理論に基づくカイラル相転移近傍のクォークスペクトルの研究を行うため、シュインガーダイソン方程式を用いた解析を行った。1グルーオン交換に基づくダイアグラムを基本にし、無限次のダイアグラムの足し上げによってカイラル相転移を実現させている。結果として、強結合領域ではグルーオンとの相互作用により大きな減衰効果を持つこと、熱質量の結合定数依存性が、弱結合の場合と異なりほぼ一定になること、等がわかった。 2前年度までに有限温度におけるフェルミオンスペクトルの研究を行っていたが、本年度はそれを拡張し、有限質量フェルミオンのスペクトルや、フェルミオン伝播関数の極構造を複素エネルギ一平面上で調べることなどをおこなった。このなかで、極の位置の温度依存性が、ある質量を境に定性的に変化することを見出し、その機構をフェルミオンとポソンの準位反発の立場から明らかにした。また、有限質量フェルミオンにおいてもある温度領域3ピーク構造がみられることも示した。さらにカイラル相転移付近のクォークスペクトルについても調べ、パイオンの分散関係の変化に起因してパイとクォークとの結合状態密度に発散を生ずる、いわゆるvan Hove特異点が現れることを示した。 3これまでの解析ではフェルミオンスペクトルを1ループ計算によって調べていたが、高次のダイアグラムの効果によってその結果がどのように変更を受けるかをみるため、湯川型相互作用を持つ模型にシュインガーダイソン方程式を用いて非摂動的に有限温度のフェルミオンスペクトルの構造を調べた。その結果、強結合領域においてもフェルミオンスペクトルに3ピーク構造がみられること、フェルミオンの熱的質量が上記1で見出された結果と同じ結合定数依存性を持つこと、などを示した。
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